錦織圭のアドバイスは「今までの打ち方でいい」 土居美咲は「お墨つき」をもらって迷いも吹っきれた (2ページ目)
【錦織はすぐに返事をしなかった】
『オープンスタンス(Open Stance)』や『クローズドスタンス(Closed Stance)』とは、ボールを打つ際の足のポジションを指す。フォアハンドの場合、利き手と同じサイドの足をセットしたあと、反対の足を前方に踏み込んで打つのがクローズドスタンス。対して、左右の足がほぼ横並びの体勢で打つのがオープンスタンス。
クローズドスタンスは後方から前方へ体重移動しながら打つため、パワーを出しやすい。他方、オープンスタンスは相手の打球への反応が早く、スピンをかけやすいなどの利点がある。
どちらが優れているという話ではなく、プレースタイルや筋力などによって、向き不向きはあるだろう。土居さんは、自分のスタイル的にはオープンスタンスのほうが合っていると思いつつも、他者の意見を聞くなかで心が揺らいだ。
そこで、錦織に助けを求める。「誰々さんにこういうアドバイスをいただいたんですが、どう思いますか?」......と。
その時の錦織は、すぐには返事をしなかったという。
ただ、それから少しあと、錦織がスマートフォンで身じろぎもせず、自分のプレー動画を見ている姿を、土居さんは目の当たりにした。
その末に錦織がかけてくれた言葉は、「基本的には、今までの打ち方でいいと思う」。迷っていたなかでのその言葉に、土居さんは「自分のテニスに"お墨つき"をもらったと感じた」と表情を明るくした。
同じ世代にロールモデルとなる存在が身近にいることの効能は、とても大きかったと土居さんは振り返る。それは技術面だけでなく、経験や精神面での助言を得られるという点でもだ。
「そういえば、リオオリンピック(2016年)の時にも、圭くんに質問したことがあったんです」
土居さんが回想する。
「リオオリンピック直前のウインブルドンで、私、ベスト16に勝ち上がったんです。グランドスラムでのベスト16は初めてだったんですが、その時、めちゃくちゃ疲れたんですよ。体力というより、精神的な疲労でした。ウインブルドンでは雨での試合中断や順延もあり、ずっと精神的に張り詰めた状態だったんです。
言い方はあんまりよくないですが、ベスト16でもこれだけ疲れた。だとしたら、それより先に行くにはどうしたらいいのだろう、と考えたんだと思います。それで圭くんに、『グランドスラムの2週目は、どうやって戦ってるんですか?』と聞きました。こんな質問、圭くんにしかできないですから。
当時は、日本の女子選手でそこまでの実績がある方はツアーにいなかったし、やはり現役の女子選手には、テニスの質問はしにくい雰囲気もあるんです。でも、圭くんなら経験もあるし、男子選手だからむしろ聞きやすいところもあった。選手村で一緒に過ごす時間もあったし、日本代表という一体感もあったので、思いきって聞けたんだと思います」
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