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錦織圭「35歳はやっぱりこたえます」 足に抱きつく息子の姿が物語る流れた月日の長さ (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【このプロセスを楽しまないといけない】

 身体の状態も「たぶん痙攣だけなので、大丈夫だと思います」と、現状では大きな不安はない様子。

「先週と先々週の2大会に比べれば、今日はよかったですし、やっと少し戻ってきたという感覚。今日の試合に負けていたとしても、納得のいくようなプレーはできていた」と、1勝以上の意義を見いだしていたようだ。

 練習や試合の日々を、点ではなく線の一部として見ることは、今の錦織のテニスへの向き合い方そのものでもあるのだろう。

 2024年末に錦織は、35歳を迎えた。区切りの数字にさしたる意味がないことは知りながらも、年齢について大会前に尋ねた時、彼は「35歳は、やっぱりこたえますね」と苦笑いしつつ、こう答えていた。

「どちらかというと、過去よりも出口のほうが先に見えてくる。若い頃とは違った意味での焦りがあるし、『早く結果を出さないと』とか、いろいろな感情は出てきますよね。

 でも、これが最後の数年だとして、結果が出なくても、このプロセスを楽しまないといけない。負けている時も、勝っている時も、自分のメンタルの保ち方とか、そこらへんをうまくやりたいなと思います」

 なお、初戦の勝利から1時間ほど経った時点で、錦織は次の対戦相手を知らなかった。

「まだ知らないので、すみませんが、次の相手の質問はなしで」

 気恥ずかしそうな笑みをふわりと浮かべて、彼が言う。残された時間を自覚しつつ、今この瞬間を慈しみながら、彼は確かな足取りで前へと進んでいく。

著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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