全豪はどうなる?大坂なおみの現在地。スタッフに「トラウマになるような体験をさせてしまった」と反省するも、心の問題は先送り (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【大坂の向かう未来はどこ?】

 久々の実戦が身体への負荷を増幅させたのは、確かだろう。全豪オープンが1週間後に迫っていることを思えば、無理をしたくないのも当然だ。

 特に彼女はこれまでの戦績を見ても、ひとたび連勝のレールにハマれば一気に加速し、グランドスラムの頂点まで疾走するケースが多い。4カ月の休養明けということも考慮すれば、今大会でのパフォーマンスは全豪に向けた自信と手応えを得るに十分なものだったろう。

 ただ、彼女が訴えてきた「心の問題」と、この先の長期的なツアー参戦に関する問いへの回答は、先送りされた感がある。

 昨年の全米オープン時に大坂は「勝ってもうれしさより安堵しか得られず、負けると痛烈な悲しみを感じる」と打ち明けた。それが「正常な状態とは思えない」と自覚したからこそ、彼女はしばらくラケットを置くことの決意をしたのだ。

 ならば彼女の真の復帰は、敗戦を淡々と受け止め、次のトーナメントに向け動き出せた時にこそ、成されたことになるだろう。年間を通じて世界各地を転戦するプロテニスツアーというシステムにおいても、それができる者がチャンピオンと規定されてきた。

 そのような"年間を通じて戦う"ことに関しては、大坂自身「まだ確信が持てない」と認めてもいる。

「フルスケジュールで戦いたいと思っているけれど、どうしても家に戻りたいと感じることもある。去年の自分の精神状態を考えると、現時点では今年、何大会プレーできるかわからない」

 どうやらそれが、大坂の偽らざる、心の現在地のようだ。

 その現時点から向かう未来は、どこなのか? あるいは変わるのは大坂ではなく、ツアーの在り方のほうなのか?

 その答えもおそらくは、長期的な視野で模索していくしかない。

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