全豪はどうなる?大坂なおみの現在地。スタッフに「トラウマになるような体験をさせてしまった」と反省するも、心の問題は先送り (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【ベスト4を決めた12時間後...】

 復帰戦となる初戦のアリーゼ・コルネ(フランス)戦では、明らかに心身の緊張がうかがえた。

 最大の武器のサーブが決まらず、得意のバックハンドもラインの内側に収まらない。第1セットを取ったあとの第2セットでは、終盤に5連続でゲームを失う場面も。それでも、「第2セットで何が悪かったかを分析した」末に第3セットは取りきって、薄氷を踏む勝利を得る。

「第3セットに向かう時は、主導権を奪いにいき、その結果ポイントを失ってもいいんだと自分に言い聞かせた」

 試合後の会見で勝者はそう言い、安堵の笑みをこぼした。

 この勝利により、彼女の心と身体は、連勝街道を走った頃の感覚を思い出しただろうか。2回戦ではマリア・ザネフスカ(ベルギー)を58分で退け、3回戦でもベテランのアンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)にストレートで快勝。

 とりわけペトコビッチとの顔合わせは、ある種のノスタルジーを醸す一戦だった。両者の対戦は今回が3度目で、初対戦は大坂がまだ16歳だった2014年。それは彼女にとって、初めて参戦するWTAツアー大会だった。

「何をすべきかよくわかってなくて、ウォームアップもせずに試合のコートに立ったりと、今思えば間違ったことばかりしていた」と回想する大坂は、この時はペトコビッチに完敗。だが、勝った当時のトッププレーヤーは「私が今まで対戦したなかで、最も速いフォアハンドを打つ選手」と、初対戦の新鋭に最大級の賛辞を送っていた。

 あれから8年。立場を変えた対戦で、大坂はフォアハンドの強打以外にネットプレーも多用し、幅広いプレーを披露。大きく成長した姿を示し、力強くベスト4へと歩みを進めた。

 ところが......。

 深夜に至ったペトコビッチ戦のおよそ12時間後。大坂は、腹筋の負傷を理由に準決勝戦を棄権することを発表した。自身のツイッターには「休養後に立て続けに激しい試合をしたために、身体が悲鳴を上げた」とつづっている。

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