大坂なおみ「自分でもよくわからない」。全米OPで突如崩壊、ラケットも投げつけ18歳に逆転負け

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 それはあまりに突然の、"崩壊"としか言いようのない敗戦への変調だった。

 全米オープンの3回戦。大坂なおみと対戦するレイラ・フェルナンデス(カナダ)は、"優秀なジュニア"から"期待の若手"への移行期にいる18歳だ。

 まだ面差しに少女のあどけなさを残すが、今季の目標を問われ「トップ10」と即答するほど、上昇志向を細身の体に秘める。アーサーアッシュスタジアムの大舞台にも萎縮せず、羨望のまなざしで追ってきた「目標の選手」に勝てると心から信じ、フェルナンデスは大坂との試合に挑んでいた。

ミスに苛立って大声をあげる大坂なおみミスに苛立って大声をあげる大坂なおみこの記事に関連する写真を見る その18歳の挑戦を、大坂は正面から受け止める。初戦では攻めに焦りやぎこちなさが見られたが、この試合ではボールを左右のコーナーに打ち分けて、相手の動きを見極める盤石のプレーを披露する。

 なによりこの試合の大坂は、サービスゲームで圧倒的な強さを誇示した。初戦では50%を切ったファーストサービスの確率も60%以上を記録。フェルナンデスも時おりサウスポーの利点を生かすポイント構築で才能の光をほとばしらせるが、単発では大坂を崩すには至らない。

 若き挑戦者が善戦するも、最後は女王が貫録を見せ勝利を得る----。そんな予定調和な余韻をまといながら、大坂が7−5、6−5とリードしたまま、勝利へのサービスゲームに向かった。

 大坂のなかで、突如として歯車が狂いだしたのは、この時である。

 最初の打ち合いで、フォアのショットがワイドに切れていった。続くポイントはバックハンドの強打で奪うも、そこからフォアのショットが続けて大きくベースラインを越えていく。最後も、フォアのクロスが意思なくアウト。

 これまで、相手に一度もブレークポイントすら与えなかった大坂が、あっけなく......あまりにあっけなく、ブレークを献上した。

 そのままもつれ込んだタイブレークでの大坂は、心の乱れを隠しきれない。ミスにラケットを叩きつけそうになり、グッとこらえたのも一度まで。次のポイントも失うと、思わずラケットを投げてしまった。

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