大坂なおみ、セリーナの涙に本音をポツリ。「永遠にプレーしてほしい」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 だが、3度のグランドスラムタイトルを懐に抱く今の彼女は、目の前の事象と過去を切り離す術を持つ。

「ごちゃごちゃ考えるのはやめよう。1ポイントずつしか取れないんだから、すべてのポイントで全力を尽くそう」と自らに言い聞かせた。

 そして今、やるべきことが明瞭化されている大坂は、誰よりも強い。

 3ゲーム目のブレークの危機を好サーブ連発で切り抜けると、文字どおり"地に足が着いた"ように腰を落とし、セリーナの強打を深く打ち返して、ラリーをじりじりと支配し始める。

 リターンでも、遮二無二ウイナーを狙うのではなく「中央に打ち返し、威力を"中和"することを意識した」。

 それは彼女がこのオフシーズン、最も力を入れて磨いた武器。それも打ち合いに持ち込めば、誰が相手でも優位に立てる、との勝算があってこその戦略でもある。

 その"中和リターン"が「なかなかうまくできたと思う」と、彼女はサラリと言った。

 同時にその頃から、セリーナにミスが増えていく。

 「なんであんなにミスをしたのか、訳がわからない」と、あとにセリーナは吐き出したが、おそらく本当はわかっている。淡々と、だが確実に自身を追い詰める23歳に、セリーナは重圧を、あるいは恐れを抱いていた。

 第1セットを6−3の逆転で奪った大坂は、第2セットに入るとさらに精神と動きを研ぎ澄ます。コートを広く使った走り合いでも、足を止め打ち合う力比べでも、大坂はセリーナを組み伏せていた。

 圧巻は第2ゲームでの、時速193kmの2連続サービスエース。大坂が畏敬の目を向けてきたリターンを、セリーナに打つ機会すら与えなかった。

 センターコートの大型スクリーンに映されるセリーナの顔に、困惑の陰が落ちていた。起死回生の一撃に悲壮な希望を込めて強打するも、叫び声とは裏腹に、ボールは伸びずネットを叩く。

 さらには、左右にピンポイントで打ち分けられる大坂のサーブも、セリーナはまったく読めなくもなっていた。ワイドに重心をかければ、190キロ超えのエースが中央に叩き込まる。中央に動けば、スライスサーブが逆サイドのコーナを滑っていった。

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