大坂なおみはさらに加速して疾走。
勢いそのままにWTAファイナルズへ
運命の歯車が音を立ててカチリとはまり、彼女は再び、行くべき場所へと流れ込む本流に飛び乗った――。
いささか大仰に響くかもしれないが、9月以降の大坂なおみの動向を見ると、そのようなフレーズがふと頭に浮かぶ。
ハイレベルのチャイナ・オープンも制した大坂なおみ「ちょっぴり、運命的なものを感じているの」
種々の情感こもる笑みとともに彼女がそう言ったのは、9月下旬に大阪市で開催された東レ・パンパシフィック・オープン(東レPPO)を制した時だった。
今季の大坂は、1月の全豪オープン優勝以来、「テニスを楽しいと思えない」日々が続いていたと言う。全豪後には世界ランキング1位にも座したため、「子どもたちのロールモデルになりたい」「グランドスラムに第1シードとして出場したい」と、自身に過剰なまでの重責を課してもいた。
その苦闘のなかで彼女が光を見つけた場所こそが、生まれ故郷の大阪で開催された東レPPOだ。直前にジャーメイン・ジェンキンスとも離別していた大坂は、父親を臨時コーチとしたこの大会で、まるで原点回帰するかのように頂点へと駆け上がる。
「これまで起きたいろんなことが、すべてこの地で、いい形で結合した」
優勝会見での大坂は、このタイトルが持つ意義を、そのように端的に総括した。
心技体が有機的に結合したそのテニスを、彼女は続くチャイナ・オープンで、さらに堅固なものへと昇華する。チャイナ・オープンはグランドスラムに継ぐグレードで、ほぼすべてのトッププレーヤーが参戦する、ハイレベルなトーナメントだ。
その大会で大坂は、準々決勝で今季の全米オープン優勝者のビアンカ・アンドレースク(カナダ)を、さらに決勝では現世界1位にして全仏オープン優勝者であるアシュリー・バーティ(オーストラリア)をも打ち破る。
この2試合は、いずれもフルセットの逆転であり、とりわけアンドレースクとの一戦は、ファイナルセット終盤までリードされる劣勢からの挽回劇。21歳と19歳の若きグランドスラムホルダーによるハイレベルな接戦は、多くの識者たちをして「女子テニスの未来は、このふたりのライバルが担っていく」と言わせしめた。
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