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ジョコビッチが偉業達成。
全コート対応の要塞型が不可能を可能にした (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 翌年も決勝に至ったものの、ふたたび苦杯をなめさせられたのが、今大会の決勝の相手でもあるロジャー・フェデラー(スイス)だ。このときも含めて、ジョコビッチは決勝で3度、フェデラーに敗れてきた。

「心理的に、とても難しい試合だった。このコートでロジャーに負け続けてきた過去は、どうしても思い出してしまう」

 今回の決勝でも、ローラーコースターが見下ろすコートでフェデラーと対峙したとき、敗戦の記憶に襲われたことを彼は認めた。だが同時に、かつてこの場で「窮状から逆転したり、勝ち上がるごとに調子を上げてきた経験」に、勇気づけられていたともいう。

「だから今回も、きっと決勝にいけば、いいプレーができるはずだ」

 自身にそう言い聞かせ、ついに栄冠を手にしたジョコビッチは、「決勝では今大会最高の試合ができた」と顔を輝かせた。

 一方の敗れたフェデラーは、決勝に辿り着いた時点で疲労困憊だっただろう。大会を通じて見舞われた悪天候のため、1日2試合を戦ったり、試合が深夜に及んだこともあった。

 だが本人は、「もしかしたら、1日2試合が影響したかもしれない。でも、しなかったかもしれない。誰にもわからないし、誰も気にする必要もない! もう終わったことだからね」と笑みを見せる。

「この会見は、僕のリターンが悪かったことを語るべき場所ではない。ノバクが成し遂げたことについて語るべきだと思うよ」

 そう定義したフェデラーは、ジョコビッチの偉業に関する自らの見解を次のように述べた。

「マスターズ制覇は、少し前の世代なら目指すことすら考えなかった偉業だ。以前はそれぞれのコートのエキスパートがいたので、不可能だと思われていた。だが、ある時からコートが全体的に遅くなり、すると多くの選手がベースラインでプレーするようになった。それが異なるサーフェス(コートの種類)すべてを制する、唯一の手段だから」

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