デ杯、東京五輪。テニス日本代表のカギはこの「ダブルス戦士」が握る (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

「ダブルスだけと決める時、まだシングルスでもチャンスがあるかもしれないと、ちょっと気の持ちようが難しかった。(でもシングルの試合で)自分だけがコートにいる時、なんでこんなことをしているんだっていつも考えていて、シングルスが全然楽しくなかった。今はすごく嬉しい。ここでセミファイナルに来て、もっともっとダブルスで上にいけるから、これからインプルーヴ(向上)していけば、チャンスがあると思う」

 振り返れば、マクラクランは嶋田コーチと出会っていなければ、メルボルンでの成功もなかったかもしれない――。

 トーマス嶋田はダブルスのスペシャリストとして、日本男子では唯一成功したプロテニス選手だった。父親の助言から23歳の時にダブルスに絞って、ATPワールドテニスツアーに挑み、ツアー優勝を2回成し遂げた。アメリカ育ちながら、日本男子選手の誰よりもサムライ精神を持ち合わせ、プロ意識が高かった。

 2005年に現役を引退した嶋田は、2016年シーズンより日本代表チームのコーチに就任し、2017年4月よりはアメリカから日本へ拠点に移して、チームのサポートをしている。

 長年、日本チームはダブルスが弱いと指摘され続け、特にワールドグループで戦うようになってからは、世界トップレベルのダブルスチームとの戦力差を痛感させられることが多くなった。嶋田コーチは、自らの経験も踏まえて、何とか日本チームのダブルスのテコ入れをしたいと考え、さまざまなアイデアを模索していた。

 実は嶋田コーチは、だいぶ前からマクラクラン勉の名前は知っていた。

「ベンのジュニア時代のコーチが、南アフリカ人のラン・ベール。彼もダブルスプレーヤーだったので、(現役時代は)よく一緒に遠征をしていたし、2~3回対戦したこともありました。南アフリカ人ですけど、ニュージーランドテニス協会で働いています。10年前ぐらいから、ベンとはメールのやりとりもありました。ベンのお兄さんのリッキー(力)も知っていましたよ」 

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