日本テニスの聖地が大改修。錦織、伊達が語る「有明でうれしかったこと」 (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 一方、女子選手でこの有明コロシアムと結びつきが強いのは、今秋に2度目の引退をした伊達公子であろう。ここで開催されたジャパンオープン女子シングルスで4回優勝(1992、93、94、96年)して、世界のトッププレーヤーになった実力を母国日本で披露した。また、第2次キャリアで初優勝したのは、2008年6月に有明コロシアムで開催されたITF大会だった(ITF大会は、WTAツアーの下部にあたる)。

 有明コロシアムで数々の好試合を演じた伊達は、一番思い出に残っているものとして「フェドカップ」を迷いなく挙げた。

 1996年女子国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループI・1回戦「日本 vs. ドイツ」では、劣勢といわれた日本が、大逆転の3勝2敗でドイツを破って初のベスト4に進出した。この対戦は、今でも"有明の奇跡"として語り継がれている。

 その奇跡への原動力となったのが、大会2日目に行なわれた伊達対シュテフィ・グラフだった。伊達は大会初日に左足を負傷し、2日目のグラフとのエース対決では100%の状態ではなかった。あっという間に0-5になったが、そこから開き直った伊達が3時間25分におよぶ大逆転劇を演じ、(7)7-6、3-6、12-10で勝利し、チーム成績を2勝2敗にして最終第5試合へつないだのだった。

「私の中でのベストマッチに入る試合ということもあるのと、対戦相手がやっぱり何よりもグラフだったということ」と伊達は述懐する。当時25歳の彼女にとっては、世界ナンバーワンである女王グラフからの初勝利であり、日本女子選手が世界1位の選手を初めて破る歴史的快挙でもあった。

 また、伊達はあの試合で日本代表チームの選手と観客との間に、今までになかった一体感を感じられたことに大きな意味があったと付け加える。

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