「ラケット破壊」への悔い。感情を抑え込んだ加藤未唯が最後に笑うまで (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その姿勢は、2時間53分の逆転劇を演じた準決勝の死闘でも、基本的に変わりはしない。ただ、第2セットで1−4の劣勢から追いついたとき、さらにはマッチポイントをしのいでタイブレークに持ち込んだときには、全身から放つように裂帛(れっぱく)の叫び声をあげた。

「あのときは、盛り上がってきてましたね」

 少し照れくさそうに、彼女は笑った。

 決勝までに8日連続で試合をこなし、特に準決勝の夜は深夜2時に眠りについた彼女は、決勝戦ではさすがに疲労を隠せなかった。フットワークに自信を持つ彼女が、その最大の武器を生かせない。本当なら届くはずのボールが、わずかにラケットの先を越えていく。これまでと同様に崩さぬポーカーフェイスは、もどかしさや苛立ちを覆い隠しているかに見えた。

 しかし......実際にコートに立つ彼女が抱えた想いは、まったく異なっていたという。

「決勝戦はすごく多くのお客さんがいたじゃないですか。すごくいいポイントを獲ったときは、拍手の多さにうれしくなって......つい笑っちゃうところでした。こうやって(と無表情を作る)プレーしてたけれど、とってもうれしくなっちゃって......拍手が」

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