どんでん返しのスイッチを入れた錦織圭。敗色濃厚から「怒濤の攻め」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「自分のテニスがよくなったのもありますが、どちらかというと相手がミスをしてくれた」

 試合後、錦織は安堵の表情を見せた。

「ケガをしていても、圭は最後までタフに戦ってくると思っていた。彼のケガに気をとめなかったし、棄権するとはまったく思っていなかった」

 挑戦者の側に身を置く57位は、世界4位の状況やパフォーマンスには意識を向けなかったと言う。だが、ファイナルセットで先にブレークしたことで、勝利が頭をよぎったのは間違いない。

「自分が勝ちを意識し始めたのと同時に、圭のプレーがよくなった。そのふたつが重なり、プレッシャーを感じ始めてしまった」

 ブレーク直後に追いつかれた落胆と、仕留めたと思った上位選手が息を吹き返したことによる重圧が、無欲だった挑戦者の手もとを狂わせる。

「ブレークした後のゲームから、圭はステップインし、プレーの質を上げてきた」

 敗者はどこか納得したかのように、試合の分岐点を省みた。

「彼(デルボニス)のプレーも、1歩下がったスタンスになっていた。ここで畳みかけないと......という思いは、特に(ゲームカウント)2-2になってからありました」

 デルボニスが感じたように、確かに錦織はこの場面で集中力を引き上げていた。相手がミスを重ねたのは、長い試合のなかで、何もこのゲームだけではなかったはずだ。

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