錦織圭が残したリオ五輪の余波。日本人選手、それぞれの成長物語 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 日本中がリオの話題で満たされるそのころ、奈良は次のトーナメント開催地であるシンシナティに早めに入り、そこで杉田やダニエルらの活躍の報を知る。

「杉田さんと太郎君は、いきなり呼ばれてもしっかり準備ができていた。でも、今の私だったら、あそこに立っても、きっと自分の力を出すことはできなかった」

 そう思い、自分の立ち位置を認識したとき、彼女の心もすっと軽くなったという。どこか吹っ切れたなかで迎えたシンシナティ大会では、予選2試合で快勝を収めて本選に出場。本選では、悪天候のために1日2試合戦う過酷なスケジュールながらも、先月ツアー初優勝を遂げたばかりのビクトリジャ・グルビク(スイス)を3時間の死闘の末に撃破。その約4時間後に行なわれた2回戦では、アナスタシア・パブリュチェンコワ(ロシア)相手に第1セットは互角の熱戦を繰り広げた。

 このパブリュチェンコワと奈良の間には、ちょっとした因縁がある。まだ、ふたりが10代半ばだったころ。ジュニアのトップ選手として活躍していた奈良は、長身で大柄なパブリチェンコワのパワーに圧倒され、自信を打ち砕かれたという。

「やっぱり世界で戦うには、あれくらいパワフルなショットを打てなくてはいけないのかも」

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