フェデラーにとって、錦織圭との対決は特別な意味を持っている (3ページ目)

  • 山口奈緒美●文 text by Yamaguchi Naomi
  • photo by Getty Images

 ただ最近、特に錦織のことは、一目置いているようだ。ブリスベン国際でも「ケイは、もうトップ選手のマインドを持っている」などと語っていた。

 実際、両者の対戦成績はほぼ互角にある。初対戦は、2011年。フェデラーの故郷スイス・バーゼルでの決勝だった。当時、フェデラーは約8年ぶりにトップ3から転落していて、世界ランキング4位。錦織はまだ32位だった。勝負は、フェデラーが6-1、6-3と圧勝した。しかし、2度目の対戦となった2013年のスペイン・マドリード(3回戦)、翌2014年のアメリカ・マイアミ(準々決勝)と、錦織が連勝。その後、フェデラーが2勝して、ふたりの対戦成績は、現在フェデラーの3勝2敗となっている。

 両者の対決は今後、よりスリリングになっていくだろう。復活を果たしたテニス界の“天才”フェデラー自身が、何より錦織のことを認めているからだ。

 錦織にとって、フェデラーは子どもの頃からの憧れの存在。トップに近づけば近づくほど、次の壁を破る困難を知れば知るほど、頂点に長く君臨してきたフェデラーへの尊敬の念は一層高まった。そんな気持ちをコートに持ち込んでいたことを、マイケル・チャンコーチに咎(とが)められたというが、だからといって、錦織のフェデラーに対する敬意が消えたわけではない。

 互いに尊重し合う者同士の戦いは、美しい。世代の異なる天才ふたりの競演――それは“世界”が「見たい」と願う勝負のひとつ、でもある。

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