全米で初のベスト8。錦織圭、6年間の確かな成長 (2ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

 大会前の会見で錦織はこのように語り、1回戦に不安だらけで臨んだ。だが、そこでストレート勝ちを収めると、手ごたえを感じて自信を取り戻し、その後1セットも落とすことなく、2008年以来となるベスト16入りを決めた。今回に限っては、自分へ過度の期待をかけることなく、気負わずにテニスをできたのが、錦織にとっていい方向へ働いたようだ。

「足の感覚もプレー自体も、1試合ずつ試しながら、本当に少しずつ前進する感じ。勝ちたいという気持ちは、いつもより少ないので、それがいい意味で力になっているのかなと。(手術後に練習していない)ブランクを自分でもあまり感じないでプレーができています」

 錦織は、最大の武器であるフットワークで、的確にボールポジションに入り、ベースライン付近から早いタイミングでボールを捕らえ、対戦相手の考える時間を奪い、試合の主導権を握った。そのボールのクオリティも高く、スピードとパワーで圧倒して、シード選手の格の違いを大会序盤で見せつけた。

 6年前の08年、18歳でUSオープンに初出場した錦織はベスト16に進出。この時は、3回戦で第4シードのダビド・フェレールを3時間32分の5セットで破った時点で、心身共に燃え尽きてしまっていた。だが、24歳になった錦織は、グランドスラムで通算7回目となるベスト16を冷静に受け止め、自他共に認める成長を遂げた。

「18歳の時は、フェレールに勝った後にほぼ満足して、うわの空の状態で次の試合を戦った。それに比べたら、今は当たり前のようにここまで来て、まだまだ先は長いという感じ。(6年前と違って)当たり前のようにここにいるのは、気持ち的にもいいことだと思うし、ハングリーになっている証拠かなと思う」

 第5シードのミロシュ・ラオニッチ(6位)との4回戦は、アーサー・アッシュスタジアムのナイトセッションに組まれ、ついに錦織は、USオープンのセンターコートに立った。

 ツアー屈指のビッグサーバーであるラオニッチに対して、「リターンがキーになる」と錦織は警戒していたが、第3セットまでにブレイクポイントを14回獲得しながらブレークできたのは3回にとどまり、セットカウント1-2とラオニッチにリードを許した。

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