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【テニス】急成長の奈良くるみ、四大大会初シードの可能性

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 ネットを挟みボールを打ち合う者が一瞬で感得する皮膚感覚は、外で観る者の何時間もの分析や、何千語の解説にも勝るものなのかもしれない――。

「コーチからは、彼女はボールをフラットに打つと言われていた。でも、実際に対戦したら、スピンをしっかり掛けたショットを打ってくるし、フットワークがとても良かった」

 これは、2度のグランドスラム優勝を誇る元世界ランキング2位のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)が、奈良くるみと初対戦し、「最も感心させられた点」として評した言葉である。

元世界ランキング2位のクズネツォワを最後まで追い詰めた奈良くるみ元世界ランキング2位のクズネツォワを最後まで追い詰めた奈良くるみ 米国のワシントンD.C.で開催されたシティ・オープンに出場した奈良くるみは、初戦で第7シードのマディソン・キーズ(アメリカ)を破ると、以降も4つの白星を連ねて今季2度目の決勝進出。キャリアふたつ目のタイトルこそ、ケガと休養から復調中の29歳のベテラン、クズネツォワに阻まれたが、それでも奈良は「やるべきことはやった」と胸を張る。

 スコアは3-6、6-4、4-6。試合時間は2時間16分。

 だが、そのような数字以上に、冒頭で触れたクズネツォワの言葉こそが、奈良の『現在』を端的に言い表していた。

「世界で最も小柄なトッププレイヤー」である155センチの奈良だが、決勝では身長で20センチ近く上回るクズネツォワと、臆(おく)することなく打ち合った。第1セットを奪われ、第2セットでも相手に3-0のリードを許すが、そこから5ゲーム連取して第2セットを奪回。鋭い回転を掛けたショットで相手を左右に振り回し、ドロップショットやロブも織り交ぜ、前後に揺さぶりをかけていく。試合が終盤に向かうほど、パワーで上回る相手以上に、ウイナーを奪ったのは奈良のほうだ。第3セットの第9ゲームでは5度のデュースを繰り返し、ブレークポイントのチャンスも手にする。結果的には、互いに勝負に出た最終2ゲームの攻防で敗れたものの、「4-4からのゲームは取りたかったが、駆け引きもしっかりできた」と、奈良は悔いを残さなかった。

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