2014.08.07

【テニス】急成長の奈良くるみ、四大大会初シードの可能性

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 ネットを挟みボールを打ち合う者が一瞬で感得する皮膚感覚は、外で観る者の何時間もの分析や、何千語の解説にも勝るものなのかもしれない――。

「コーチからは、彼女はボールをフラットに打つと言われていた。でも、実際に対戦したら、スピンをしっかり掛けたショットを打ってくるし、フットワークがとても良かった」

 これは、2度のグランドスラム優勝を誇る元世界ランキング2位のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)が、奈良くるみと初対戦し、「最も感心させられた点」として評した言葉である。

元世界ランキング2位のクズネツォワを最後まで追い詰めた奈良くるみ 米国のワシントンD.C.で開催されたシティ・オープンに出場した奈良くるみは、初戦で第7シードのマディソン・キーズ(アメリカ)を破ると、以降も4つの白星を連ねて今季2度目の決勝進出。キャリアふたつ目のタイトルこそ、ケガと休養から復調中の29歳のベテラン、クズネツォワに阻まれたが、それでも奈良は「やるべきことはやった」と胸を張る。

 スコアは3-6、6-4、4-6。試合時間は2時間16分。

 だが、そのような数字以上に、冒頭で触れたクズネツォワの言葉こそが、奈良の『現在』を端的に言い表していた。

「世界で最も小柄なトッププレイヤー」である155センチの奈良だが、決勝では身長で20センチ近く上回るクズネツォワと、臆(おく)することなく打ち合った。第1セットを奪われ、第2セットでも相手に3-0のリードを許すが、そこから5ゲーム連取して第2セットを奪回。鋭い回転を掛けたショットで相手を左右に振り回し、ドロップショットやロブも織り交ぜ、前後に揺さぶりをかけていく。試合が終盤に向かうほど、パワーで上回る相手以上に、ウイナーを奪ったのは奈良のほうだ。第3セットの第9ゲームでは5度のデュースを繰り返し、ブレークポイントのチャンスも手にする。結果的には、互いに勝負に出た最終2ゲームの攻防で敗れたものの、「4-4からのゲームは取りたかったが、駆け引きもしっかりできた」と、奈良は悔いを残さなかった。