【テニス】全豪直前。再び「トップ10」を明言した錦織圭の覚悟 (2ページ目)

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 そのプレイ面の充実に加え、ブリスベン国際とAAMIクラシックで得た収穫は、自身の肉体への手応えだろう。クーヨンで錦織を見た時、日に焼けた姿の次に目を惹かれたのが、サポーターの巻かれていない「ひざ」である。思えば、ひざは昨年のこの時期に痛みを抱え、その後1年を通して錦織を苦しめてきたものだ。そのひざからサポーターが消えたことは、間違いなく良い兆候である。

 もうひとつ、ケガと言えば、腹筋も2年前から引きずった不安材料であった。しかしクーヨンでは、腹筋にテーピングが貼られることもなかった。「ひざや腹筋は問題ないです」という言葉にウソはなさそうであり、錦織をサポートするスタッフたちも、「仕上がりは昨年のこの時期に比べれば、はるかに良い」と太鼓判を押す。錦織はこの2週間で、炎天下のブリスベンで3試合、そしてクーヨンで3試合を戦っている。それらを終えても錦織は、「フィジカル的には問題ない。これから(全豪では)5セットの試合も出てくるが、身体は強くなっていると思います」と、さらりと言ってみせた。

 それら、確たる自信と結果を得て挑む2014年の全豪オープン。その目標を錦織は、「ベスト8以上」と公言する。ベスト8に達するには4回戦を突破しなくてはならないが、そこで待ち受ける相手は、おそらく世界1位のラファエル・ナダル(スペイン)。錦織が過去5戦して、一度も勝っていない相手である。

 奇しくも3日前、「これまで対戦した相手で最も強い選手は?」と聞かれた錦織は、「トップ4の選手はもちろん全員だが、ナダル......特にクレーでのナダルは強い。昨年の全仏で対戦した時、何もさせてもらえなかった」と述べている。全豪のドローが発表された時、はたして錦織は、そのナダルの名を目で追ったのだろうか?

「ドローが出た時、どの程度先まで対戦相手を確認したのか?」

 そのようなこちらの問いに対し、錦織は、「初戦の相手しか見ていません」と応じると、少し間を置き、ニヤリと笑った。不敵にも、あるいは照れ隠しにも見えるその笑みの真意は測りかねるが、こちらの目には、どこか頼もしく映った。

 また、「グランドスラムでベスト8以上」と並び、錦織が口にした今季の目標が「トップ10」である。これらは、昨年の同時期に挙げた目標と同じだが、その言葉に含まれる意味の違いは明らかだ。

 1年前の彼は、その領域に肉薄することが何を意味するのか、どのような変化が彼にもたらされるのか、事の大きさをすべては知らなかったはずだ。知らなかったからこそ、口に出来た言葉であった。

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