伝統のラグビー「慶明戦」はなぜ大差がついたのか。3年生BKコンビが主将不在の明治大を「前へ」押し進めた (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

田村優2世と呼ばれる20歳

 なかでも実力を遺憾なく発揮したのは、SO(スタンドオフ)伊藤耕太郎とインサイドCTB廣瀬雄也の「3年生コンビ」だ。

 伊藤は國學院栃木高の出身で、同じ高校→明治大の先輩になぞらえて「田村優2世」と称される選手。大学1年時はFB(フルバック)にもチャレンジしたのち、昨季から田村と同じ10番を背負って攻撃をリードする。ゲームコントロールだけでなく、隙があればランでトライも取れる攻撃的な司令塔で、細身に見えるがタックルもいとわない。

 一方、父がサニックスの選手だった廣瀬は、ラン、キック、パスのスキルが総じて高く、東福岡時代から将来を嘱望されていた選手。明治大入学後は身長179cmの体格を活かしたタックルを武器に、1年時から12番を背負い続けている。また、キックの精度や飛距離も伸びており、プレースキックでの安定感も増してきた。

 ディフェンスとタックルが強みの慶應大に対し、序盤の明治大は我慢の展開を強いられる。だが、伊藤は冷静にタクトを振り続けた。

「慶應大のディフェンスがよく、アタックで我慢し続けることは試合前からわかっていた。前半20分は厳しい時間が続くと思っていたので、焦ることもなかった」(伊藤)

 前半8分、FWとBKが一体となってボールを継続したのち、伊藤が15次攻撃で大外へロングパスを通してHO(フッカー)松下潤一郎(3年)のトライを演出。廣瀬も「慶應大の激しいディフェンスを我慢して1本取りきれたのは、今日の最終的なスコアにつながるいいアタックだった」と胸を張った。

 前半を23点リードで折り返したあとも、明治大の優位は変わらず。最終的に8トライを奪う猛攻で、慶応大を54−3で圧倒。伊藤は司令塔として攻撃を引っ張り、廣瀬もプレースキック8本中7本を決めて勝利に貢献した。

「試合前からやることが明確になっていたので、みんな思いっきりアタックできたのがよかった。フォーカスに挙げていたゲインラインや1vs1でいいアタックができた」(伊藤)

「2年前、面子の揃ったNo.8(ナンバーエイト)箸本龍雅(現・東京サンゴリアス)さんの代でも負けた慶明戦。実力以上のことが試合に出ると考えていたので、相手以上に準備できたことがこういう結果になった」(廣瀬)

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