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オールブラックス戦でチーム最多の12得点。早熟と言われたSO山沢拓也の才能がついに開き始めた (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

サッカー仕込みのボールさばき

 もちろん山沢にとって、オールブラックスが試合前に行なう伝統の「ハカ」も初体験だった。「どういう気持ちでいたらいいのだろう......どこ見たらいいのかな......と思って見ていました」。それでも今年、ワイルドナイツにリーグワン初優勝をもたらした28歳の司令塔は、試合が始まると冷静にタクトを振り続けた。

「チームとしてひとつの方向に向かっていけるように、戦うエリアを意識しました。オールブラックスはアタックが強いチーム。(自陣)ゴール前でアタックされたらトライにつながりやすいので、いかに自陣に入れないようにするかを考えた」

 その結果、山沢は1トライ、3つのプレースキックを成功させ、チーム最多の12得点を挙げて存在感を示した。しかし、チームを勝たせることはできなかった。山沢は「すごく悔しい気持ちです。拮抗したなかで1トライ、1点の重みを感じる試合となりました」と振り返る。

 山沢らしさを見せたのは、3−21で迎えた前半37分のシーンだろう。日本代表CTB(センター)ディラン・ライリーのキックを相手がキャッチミスすると、そのこぼれ球を山沢が足に2度かけて、最後はボールを自ら拾い上げて左中間に押さえた。

 中学までは埼玉の強豪クラブチーム(クマガヤSC)でサッカーをしていた山沢の得意なプレーで、リーグ戦で何度も目にしてきた形だ。

「敵陣でプレーできていたから、得点に結びついたのかな。トライのチャンスがあるかも知れないと思って追いかけました。ドリブルがうまくいって、自分のところに転がってくれたので、トライにつながってよかった。正直、ラッキーでしたね」

 後半9分、山沢は交代となった。もう少しピッチで見たかったファンも多かったことだろう。伸び盛りの若手SO李にプレータイムを与えたかったことも、ジョセフHCが交代に踏み切った理由と思われる。

「なかなかうまくいかない部分もあったのですが、フレッシュな承信が勢いを出してくれればいいかなと思いました。(オールブラックスに)簡単にトライされたシーンは(今後)抑えられたらいいかな」

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