早大の大物ルーキーは「持っている男」。初先発初トライでチームに弾み (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 試合後のオンラインの記者会見。伊藤は不参加だったが、相良監督は「期待以上というか、期待通りの活躍をしてくれたんじゃないかなと思います」と褒めた。

「のびのびと、しっかりとボールキャリーで力を発揮してくれました。初先発でトライを取り切る。非凡さを見せてくれました」

 伊藤に関する記者の質問が相次ぐ。「スタメン(先発)で起用した意図は?」と聞かれると、相良監督は「とくに特別な意図はないですけど」と苦笑した。

 伊藤は179cm、85kg。夏場に太もも肉離れを起こし、戦列から離れていた。だが基本技術を確認し、大学のゲーム運び、ボールを持たない時の動きなどを研究していた。とことん考え、鍛え、自分のプレーを磨く。

 ケガから復帰し、大学デビューは関東大学対抗戦・慶大戦の終盤、8分間ほどだった。だが、数10mライン際を快走し、光り輝いた。その時の自己採点は「50点ぐらい」と手厳しかった。先の早明戦でも後半の終盤に交代出場。ボールタッチが少ない上にハンドリングミスも犯し、敗戦に悔しさを募らせた。

 福岡県久留米市出身。小学校からラグビースクールに通い、力をつけてきた。高校を地元の強豪の東福岡高ではなく、関東の桐蔭学園高に進学したところに志の高さを感じる。

 伊藤は「目標は日本代表」と口にする。相良監督は伊藤をこう、評したことがある。

「もちろんプレーは非凡なところがあるけど、一番いいところは"高み"を見ているところじゃないですか」

 1年生が躍動すれば、他の選手も勢いに乗る。相良監督が前日、選手に掛けた言葉は「チャレンジ」だった。早大の歴史は概して、からだの小さい者が大きい者に挑み続ける挑戦の連続だった。それがチーム文化でもある。

 早大は、明大戦で苦しんだラインアウトも改善した。慶大がサインを変えてきても、早大はうまく対応した。とくにゴールライン前のピンチ。下川を軸にプレッシャーをかけて慶大のミスを誘い、相手得意のモールを許さなかった。丸尾主将は「4年生を中心にBチームがいい研究をしてくれた」とチームメイトに感謝した。

「試合中もコミュニケーションをとり続けられました。相手の反応をしっかり見て、どうするかまで話してやれた。ゴール前も、やろうとしていたディフェンスとは違っても、現場の判断で対応できました」

 スクラムも組み勝っていた。勝負どころのブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)では激しく、先に先に仕掛けた。とくに倒れては立ち上がるスピード、二人目のスピードと強度で優位に立った。バックスも大きく回し、槇瑛人、古賀由教の両ウイング(WTB)が快足を飛ばした。それにしても、センター長田智希のパスプレーの巧みさよ。

 もっとも、後半は慶大の反撃に早大の勢いが止まった。接点で後れをとり、プレーの精度、規律が甘くなった。

 昨季と同じく、早明戦で敗れたあと、早大は大事なチャレンジ精神を取り戻した。次の準決勝(2021年1月2日・秩父宮ラグビー場)の相手は難敵・帝京大。まずは接点、ブレイクダウン勝負となる。

「先を見ず、帝京に勝つために一日一日積み重ねて、ぶつかりたい」

 丸尾主将は言葉に力を込めた。早大は対抗戦グループでは45-29で帝京大を圧倒した。だが、今度は互いのチーム状況やマインドの持ち様が違う。

 どのチームもまだ成長途上だろう。今季のチームスローガンが『BATTLE』、いわば闘争だ。日々の練習からチャレンジできるかどうか、攻めるマインドに徹することができるどうかが大学連覇のカギとなる。

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