【ラグビー】美しき勇者「サクラセブンズ」、リオのメダルが見えた (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 リーグ戦ではカザフスタンに5-7で敗れ、五輪出場を決めることができなかった。2時間半後の決勝戦。選手のロッカー室には、元日本代表選手たちの激励の言葉が書かれた日の丸の旗が掛けられていた。こんな書き込みがあった。<エディーさん、男子のみなさん、ごめんなさい。世界で一番走ってきたのは、わたしたちです>。中村主将が笑いながら思い出す。

「たしかになあ、って思いました。自信になった。死ぬ思いをしながらの、5年間の苦労でしたから」
 
 決勝はカザフスタンとの再戦。それまでの7分ハーフと違い、決勝は10分ハーフ。相手がフィジカル勝負でくるのは分かっていた。でも体力勝負なら自信がある。日本は走って、走って、走りまくった。

 ディフェンスでは、1人目がロー(低い)タックル。2人目が素早く寄る。倒れても、すぐに立ちあがる。攻めては、フェーズ(局面)をしつこく重ねていった。
 
 決勝トライは後半7分だった。PKから立て続けに速攻を仕掛ける。155cmの大黒田裕芽が小さいスペースに走り込み、タックルを受けながら、ロングパスを左外に飛ばした。大黒田がユーモラスな口調で振り返る。

「ミフユ(小出深冬)ならトライしてくれるだろうって。だって、『勇者モード』があるので。"もう、お願い"っていう感じでした」

 勇者モードとは、19歳の小出の前に走るコースが突然、生まれることだそうだ。大黒田の期待通り、小出は1人目をステップでかわし、内側に切れ込んで、相手2人を置き去りにしてしまった。中央にトライ。

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