【ラグビー】熟成の途上。全勝で連覇を達成したサントリーのクラブ文化 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

 勝負のポイントはディフェンス、とくに東芝得意のモールに対するディフェンスだった。ヤマ場が後半20分過ぎだった。スコアが12-3。SHデュプレアが反則でシンビン(10分間の一時退場)を食らった直後、サントリーはゴール前の窮地を迎えた。

 東芝ボールのゴール前5mのラインアウトだった。相手得意のモールをつくられかけたとき、真壁主将とフランカーのジョージ・スミスがふたりがかりで東芝ロックの望月雄太をボールごとラインの外に引きずり出した。

 ピンチを脱した。サントリーFWは雄叫びをあげ、ハイタッチをした。ここでトライを許していたら、たぶん流れが変わっていただろう。真壁主将の述懐。

「ほんとうは相手を崩したかった。でも崩せなかった。だから、割っていって、強引にタッチに引っ張りだしたのです」

 要は一人ひとりが責任と役割を果たした。相手がモールを作ろうとすると、まずひとり目が低く速くくさびを打ち、押し崩した。たとえモールを作られても、ファイトし、レッグドライブ(足をかく動作)を続けた。スクラムでも、サントリーの8人の結束は最後まで変わらず、崩壊させられることはなかった。

 ハングリーだからか、隠れたファインプレイは山ほどあった。ピンチで何度も相手ボールを奪取するターンオーバーを繰り返したジョージ・スミスのいぶし銀のプレイ。2度、東芝にゴールラインを割られたけれども、ボールの下にスミスが、FB有賀剛がまとわりつき、トライを許さなかった。

 2度、シンビンを犯し、トータル20分間、ひとり少ない状況で戦った。それでも攻撃のリズムも防御網も乱れなかった。残った14人のそれぞれが5~10%アップの働きをしたからである。

 結局、東芝をノートライに封じた。ディフェンスがよければ、アタックもさえる。なんと言ってもSO小野晃征の判断がよかった。迷いがなかった。入社3年目のナンバー8、西川征克も、2年目のWTB村田大志も、伸び伸びとプレイした。試合後、ふたりとも「ハングリー」という言葉を出した。

 とくに村田は2トライの活躍だった。24歳は喜ぶ。「いい意味でも悪い意味(シンビンで一時退場)でも目立った試合となりました。全員、ハングリーに前に進むことを意識した結果だと思います。うちは誰が出ても、サントリーのラグビーをやり通せるのです」と。

 ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でも激しくファイトし、重圧をかけた。スミスが加入した効果だろう、他のFWも球際のプレイがしつこくなった。「大久保監督の色は」と聞かれ、フランカーの佐々木隆道が少し考え、笑いながら答えた。「みんながハングリーということですかね。ベリー厳しく指導してもらうので、昨季より、ベリーハングリーになりました」と。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る