パリオリンピック女子卓球 銅メダル早田ひなが起こした「奇跡」にして「必然の物語」 (3ページ目)
「奇跡」
石田コーチの言葉を借りれば、そうなる。ただ、準々決勝からの道のりを振り返ると、彼女は必然の物語を作ったのかもしれない。
「大舞台で自分(の戦い)がどう転ぶか」
早田はコーチにそう言っていたという。
負傷をして、いろいろな選択肢があっただろう。こんな状況で勝つ見込みは低く、コートに立つべきではない。ケガがひどくなったらどうするのか。4年後もあるし、無様な姿を晒すべきではない......。どれもひとつのロジックだ。
しかし、彼女はどれも選ばず、コートに立っている。勝ち筋を見つけ、ほとばしる闘志で挑みかかった。逆境をひっくり返す。そこに彼女の矜持はあった。
「本当ならできるかわからない、というところでしたが、ひなが覚悟を決めました」
石田コーチは言っていたが、奇跡を起こすには奇跡的な決断をするしかない。
8月5日、もうひとつのメダルを争う団体戦。早田は治療ケアを受け続け、出場する見込みだという。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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