パリオリンピック卓球混合ダブルスまさかの敗退 張本智和・早田ひなに何が起きたか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 早田は、前髪を揺らしながら言った。

「男子選手の威力が思った以上にすごかったので、そこで攻めても倍で返されたり、張本選手のボールを男子にも女子にもカウンターされてしまったり、"北朝鮮の選手の精度はすごいな"と感じました。オリンピックだから負けたというよりも、普通に試合しても負けていたんじゃないかな、と。そこは自分たちが戦術を変えられなかったのが敗因だと思います。どの選手もオリンピックのために仕上げてきているので、そこを越えられなかった悔しさはありますね」

 一方、張本は簡潔にこう語った。

「(敗因の)一番は、4ゲーム目を取りきれなかったことにあると思います。1-4で負けたからと言って、すべてが悪いわけではありません。もし4ゲームのデュースの展開で、1点を取りきって逆転できていたら、相手も焦りが出たはずで......」

 勝機はあった。彼が言うように、それだけの気運は会場に漂っていた。第4ゲームを取って心理的にイーブンになったら、実力差を出せていたはずだ。だが......風は吹かなかった。それも五輪という舞台装置の気まぐれか。

「ふたりにはミックスをやってわかった雰囲気を生かし、それぞれシングル、団体で爆発してほしいです。悔しい思いを胸に」

 田勢監督はそう励ましの言葉を送った。張本・早田のパリオリンピックはまだまだ続くのだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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