パリオリンピック卓球混合ダブルスまさかの敗退 張本智和・早田ひなに何が起きたか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「あれをされたらしょうがない」】

 それでも、「まさか」の展開だった。カウンターを決められ、バックハンドが外れ、スマッシュがネットにかかる。得点も相手のミスによるものが多く、自分たちの形で決められず、流れを引き寄せられない。第2ゲームは11-7で取り返したが、第3ゲームを4-11で落とした。

 張本は実感を込めて語っている。

「有観客(での五輪)は初めてだったので、会場の盛り上がりはすごかったですけど、そこの影響はなかったと思います。今日は、特に(北朝鮮の)男子選手のプレーがよすぎました。あのプレーはミックスだけで言えばトップテンに入る想像以上のプレーで。悔しいですけど、あれをされたらしょうがないかなって思います。五輪予選も映像で見ましたが、こんないいプレーをしていなかったんですけど......」

 想定とのズレがあったのだろう。それを埋められないまま、"奇襲"に成功した相手の勢いの力に押された。押されることによって張本と早田は勢いを失い、ペースを掴めなかった。第4ゲームはデュースから13-15で落とし、第5ゲームも10-12で敗れた。

「大事にいきすぎて消極的になりました。相手のほうが、思いきりがよかったと思います」

 田勢邦史監督は、試合をそう振り返っている。

「第1ゲームは、北朝鮮の男子選手にプレッシャーをかけられて、大きく仕掛けられませんでした。0-6とリードされ、うまくいかず......。ただ、アンラッキーなところもあったので、第2ゲームを確実に取って、さて、どう戦うかというところでした。そう考えると、第1ゲームであっさりと負けず、もう少し競っていたら情報が入っていたはずで。お互い様ですが、初めてやる相手は怖いですね」

 五輪という舞台装置は、少なからず影響していただろう。現場に立って感じられることだが、国の威信を背負った切実さは半端ではない。相手の足元をすくってやろうと、死に物狂いなのだ。

 たとえ選手本人が平常心でも、相手に冷静さと執着で最大限の力を使われたら、天秤は簡単に一方へ傾く。

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