早田ひなは新たな武器を手に入れた。苦悩の1年を経て才能が開花 (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 中村博之●写真photo by Nakamura Hiroyuki

 もちろん、最大の強みである強打と、長いリーチを活かした持ち前のアグレッシブなスタイルも健在。「サウスポー対決」となった石川との決勝でも、バックハンド同士の打ち合いでは早田がほぼポイントを奪っていた。両ハンドからの強打は石川にチャンスボールを与えず、ラリーでも後陣で耐え抜いて強烈なドライブで攻めに出た。台を離れた位置からでも、驚異的な身体能力で攻撃に転じる早田の卓球は、世界でも類似する選手が浮かびにくい。多くの日本人選手と同じように、早田もなかなか石川の壁を破れなかったが、決勝ではその石川を圧倒してみせた。

 長年コーチを勤める石田大輔氏は、早田のスタイルに関してこんなことを話していた。

「攻めの姿勢を崩さないというのが、ひなのスタイル。攻めることはリスクもありますが、中国選手に勝つにはかわすのではなく、攻めきらないと勝てない。攻めきるというのは難しくて、試行錯誤した時期もありました。ただ、小さい頃から中国に勝つということを目標にやってきたので、ひなの強みである攻めの卓球で上を目指してほしい」

 もちろん、今回のようなプレーをシングルスの試合で継続できるか、という課題は残っているだろう。しかし攻撃卓球のスタイルを貫きながらも冷静さを保ち、全日本のタイトルを獲得したことで自信を深めた早田には、さらなる進化が期待できる。

「平野選手が優勝して、伊藤選手が優勝して、そこに私も続きたい気持ちはやっぱりあった。なので、準決勝で伊藤選手、決勝で石川選手に勝って優勝することができたのはすごく自信になりました」

 悩み抜いた1年を経て大きな成長を遂げた、"遅れてきたヒロイン"。早田の存在は、今後の黄金世代の争いをより激化させるだろう。彼女たちが高いレベルで競いあうことで、打倒・中国という目標は現実味を帯びてくるはずだ。

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