2020.01.23

早田ひなは新たな武器を手に入れた。
苦悩の1年を経て才能が開花

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 中村博之●写真photo by Nakamura Hiroyuki

 2000年生まれの女子卓球「黄金世代」のライバル2人と遜色ない、底知れぬ才能が開花した。

 全日本卓球女子シングルスで、伊藤美誠、石川佳純の東京五輪シングルス内定組を破り、早田ひなが初の栄冠を手にした。試合後、伊藤が「実力は出せたと思っているので、実力負けだと思う。早田選手が上回っていたということ」とコメントを残せば、石川は「ずっと向こうのペースだった」と新女王を称えた。大会を通して好調をキープしていた伊藤、石川を真っ向からねじ伏せたことも、優勝の価値をさらに高めたと言えるだろう。

伊藤、石川を破って全日本シングルスを制した早田 早田は同世代の伊藤、平野美宇も手にした全日本シングルスのタイトルを、10代の最後に獲得した。早田の好調時のパフォーマンスは、中国選手すら凌駕するインパクトを残すが、焦りからのミスも多くどこか詰めが甘い――。素質は誰もが認めるところだが、ライバルであり、親友でもある伊藤や平野ほどの成績を残してきたわけではない。”未完の大器”と呼ばれることもあったが、出色の内容で女子卓球の頂きに登りつめた。

「これまで苦しいことだったり、頑張っても、頑張っても結果が出ないことがすごく多くて。それでも常にたくさんの人が、『ひなちゃんがんばれ』って応援してくれたので、結果として恩返しできてよかったと思います」

 大会後の早田の何気ない言葉が、彼女の進化の過程を物語っているようで強く印象に残った。

 昨年6月に筆者は、早田が4歳の頃から在籍する福岡県の石田卓球クラブを訪ねた。幼少期から慣れ親しんだ卓球場でのインタビューは、早田の1年間を振り返るものだった。当初の予定時間をオーバーしても真摯に質問に答えてくれた早田は、そこでこんなことを話していた。

「私の性格的に、責任感が強く出る団体戦は合っているんですけど、最後は自分との戦いになるシングルスで”燃えきれない”のが課題なんです……」

 早田にとって東京五輪の選考イヤーだった昨年は、決して満足のいく1年ではなかったはずだ。世界選手権の選考会ではあと1点が取れず、五輪選考に関わるほかの大会でも、あと1勝、あと1歩が届かないという結果が続いた。ライバルたちは何よりもツアーの結果を最優先に、過酷なスケジュールを戦い抜いていく。そんな選考レースの最中に漏れた早田の言葉は、アスリートとして、また勝負師としては”優しすぎる”性格を象徴しているように思えた。