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日大アメフト事件。ラグビー大西先生の教えに思う「指導者の資質」 (3ページ目)

  • 松瀬学●文・写真 text & photo by Matsuse Manabu

 大西先生はコーチにもっとも必要な資質を問われ、こうおっしゃっていた。

「そこにいる人間を愛する能力だ」

 見返りを求めないラブ。これはもう天性であろう。学生をリスペクトする。相手チームも競技そのものもリスペクトする。そういった意味では、日大アメフト部の内田監督は指導者失格だったのではないか。

 学生スポーツとは何か。あくまで大学は教育機関である。スポーツを通した人格形成、人づくりが最優先されなければならない。だが、日本のスポーツ界には強圧的で理不尽な指導、あるいは古い体育会系気質が根強くはびこってきた。この体質が、暴力事件を生み出してきた。今回の一件も、指導陣によるパワハラという"犯罪"ではないかと考える。

 学生スポーツは本来、学生の自主を促し、自己コントロールをどうやっていくかの訓練の場である。何より、人づくりに主眼をおくべきであろう。ラグビーでいえば、大学選手権9連覇の帝京大の岩出雅之監督はいつも、人間教育を念頭に置いてきた。

 岩出監督は以前、こう言っていた。

「優勝することが頂上じゃないと思うんです。学生の人生を考えたら、これから20代、30代と積み上げていくことになる。未来につながるものを積み上げていく機会として、ラグビーがあり、出会いがあると思うんです」

 岩出監督は学生とのコミュニケーションをことのほか大事にする。部の体質を変えるため、上級生が掃除や食事当番などの仕事をするようにした。上級生が下級生の見本となり、下級生が上級生をリスペクトする。指導者と学生も同じだ。いわば「リスペクトの文化」だろう。  

 帝京大ラグビー部に限らない。小生が専任教員として勤める日本体育大学の野球部もまた、これまでの体育会の常識を覆すチームづくり、『体育会イノベーション』に取り組んできた。野球部の古城隆利監督は、大学の先輩にあたる岩出監督からも学び、ここでも学生とのコミュニケーションを重視し、上級生に雑務を担当させている。

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