パリオリンピック男子バスケ日本対ドイツを千葉ジェッツ・原修太が考察「八村塁の凄みも再確認」 (3ページ目)
【フランス戦はリバウンド、控え選手が鍵に】
――次は開催国フランスが相手です(日本時間7月31日0時15分/30日深夜)。NBA新人王、224cmのビクター・ウェンバンヤマ、NBAの最優秀守備選手賞を4回受賞している216cmのルディ・ゴベアを擁し、ドイツ以上に高さを生かしてくるチームです。ドイツ戦で見えた長所、課題を含めて、ポイントをあげてください。
原 リバウンドとベンチから出場する控え選手です。
リバウンドは、ドイツより高さのあるフランス相手でもなんとか確保したい。全員でリバウンド、ボールをタップして繋いだり、ルーズボールを取りに行く意識は共有されているので、実践できるかどうか。
ドイツ戦での控え選手の得点は7対38と差が出ました。僕も昨年のワールドカップでそうでしたが、あの緊張感、あの強度で突然試合に出て、ボールをポストに入れるだけでも難しい状態になるのは理解していますが、そこを踏ん張って、1本でも2本でもシュートを決めてほしい。二ケタ得点を求められるわけではないので、出ている時間に集中して得点を増やせれば、チームにいい流れを呼び込めます。
――チームの全体的な展開としてはどのような形が望ましいでしょうか。
原 ドイツ戦では、トランジション(素早い切り替え)で攻めることができている時は、(渡邊)雄太の3ポイント、ジョシュ(ホーキンソン)と河村選手のピック&ロールで2本連続決めたシーンがありました。あれは、トランジションの流れのなかでピック&ロールが起こり、相手がスイッチして(1対1でマークする対象者を替える)きた時に隙をついた形でした。ただ、日本がしっかりセットしてピック&ロールを仕掛けてしまうと、相手にスイッチでしっかり対応されてしまう(マークする相手に明確につかれてしまう)ので、相手のスイッチディフェンスをどう攻めるかがポイントになるのではないかと思います。
ディフェンス面でも、スイッチがポイントになります。ドイツ戦では、雄太が相手のガードフォワード型の得点源についた時、明らかにそこを狙ってきた場面がありました。雄太は試合を通してずっといいディフェンスをしていたので、その部分が少し気になりましたが、そこをチームとして対処するのか、それとも雄太自身で工夫して対処するのか。
あと、フランスについては高さですね。224cmのウェンビーと216cmのゴベアの2枚に対してどう守るか。強化試合では、ウェンビーからゴベアのハイロー(フリースローライン近辺のハイポストからリング下近辺のローポストにパスを出す)攻撃も多かったので、どう対応していくのかは考えていると思います。
――スイッチでいうと、河村、富樫の両選手には高さのあるインサイドの選手がマッチアップする場面も目立ちました。
原 ドライブされてもいいくらいのつもりで、日本の3ポイントを消しにきていた印象でした。でも、ふたりは日本が誇るガードですので、ドライブするのか、3ポイントを打つのかは彼らのチョイスですが、ドイツ戦ではペイントエリアでの得点が20対46と差がついたので、インサイドの高さは相手が上ですので、彼らのドライブで活路を見出す方法もあると思います。印象的にはドライブしてからキックアウトの展開がチームとしてすごいよかった。もっともっとドライブに行ってパスが捌けたらいいなと感じました。
――フランス戦、ブラジル戦の終了まで、何が起こるかわかりません。
原 40分間自分たちのバスケットをやることって、オリンピックのレベルではやはり難しい挑戦です。それをあと80分続けることになるわけですが、先のことを考えずに、まずは次の40分間に集中してほしいです。
劣勢になる時間帯は多いと思いますが、ドイツ戦のように3ポイントをしっかり打ち、点を取られたらすぐに攻撃に展開するなど、勝つチャンスはあると思います。みんなには頑張ってほしいです。
【Profile】原修太(はら・しゅうた)/1993年12月17日生まれ、千葉県出身。市立習志野高→国士舘大→千葉ジェッツ。身長187cm、体重97kg。高校までは全国大会で目立った活躍はなかったが、大学入学後から徐々に才能を開花しシューターとして活躍。大学卒業後に千葉ジェッツに入団すると、プロ2年目の2016-17シーズンから徐々に出場機会を増やし、3年目からはチームの主力に定着。これまでBリーグ優勝1回、天皇杯優勝4回、2022-23シーズンはリーグのベストディフェンダー賞、ベスト5に選出される。2023年夏のワールドカップでは日本代表としてパリ五輪出場権獲得に貢献し、パリ五輪日本代表候補に名を連ねた。
著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。
バスケ原修太(千葉ジェッツ) フォトギャラリー2023-24
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