日本バスケの未来、富永啓生。ジコチュー批判も「それを覆したかった」 (2ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

 その結果、1回戦(対広島皆実)、2回戦(対高知中央)と勝ち上がり、目標としていた3回戦の開志国際にも89−75で勝利。次の準々決勝で実践学園(東京)に勝ち、ベスト4に駒を進めた。準決勝で優勝チームの福岡第一(福岡)に敗れたものの、3位決定戦に勝利して3位で大会を終え、平均39.8点で得点王にも輝いた。

 この大会でも、富永はとても楽しそうにプレーしていた。自由自在に動き回り、シュートを打ちまくる。そのスタイルには批判の声もあったが、楽しくて仕方なかったという。

「もう、めちゃめちゃ楽しかったですね。ああいう舞台......大きな会場、たくさんの人がいる中で試合することがそれまでなかったんで。1回戦とか、最初はめちゃめちゃ緊張したんですけれど、楽しくやらないともったいないなと。緊張していても仕方ないと思ったんで」

 自由奔放に見えるプレー、笑顔を振りまいて大きなジェスチャーで喜ぶ姿に対して、自己中心的だとか、相手に対して失礼だという批判の声もあった。富永自身にも、そういう声は聞こえてきていたという。

 まだ高校生。そういった周囲からの批判の声にショックを受けたのではないだろうか。そう聞くと、富永はあっさりと「そうでもなかったですね」と答えた。

「自分もそういう(批判の声を取り上げた)記事はたまに見ていたので。たしかに今までの日本ではないようなスタイルだったんで、そういう声もあると思うんですけれど、それを乗り越えて、それでもシュートを決め続けて、覆していけるようになりたいなっていうのはあった。

 自分のプレーを変えるつもりはなくて、自分の特徴であるシュート力は変えず、ずっと打ち続けていこうかなって思っていました」

 まさに、シューターのメンタリティだ。シューターにとって、何本続けて外しても次に打つシュートは必ず決めると思い続ける強い心が必要不可欠だ。

 たとえ5本続けて外しても、次の5本を決めれば成功率は5割になる。決まらないことで変に躊躇したりシュートフォームを変えると、むしろうまくいかなくなる。ディフェンスからどれだけマークされても、それをかわし、一瞬の隙でシュートを決め切る力があるという自信を失わない。そんな不動の心があった。

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