【男子バスケ】佐古賢一が見せた、ヘッドコーチとしての手腕

  • 横谷和明●取材・文 Yokoya Kazuaki
  • 伊藤真吾/アフロスポーツ●写真 photo by Ito Shingo/AFLO SPORT

"ミスターバスケットボール"佐古賢一が、オールジャパン()の舞台に戻ってきた。
※第90回天皇杯・第81回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会。男子36チーム、女子32チームがトーナメント戦を行なう。

 現役時代のユニフォームからスーツ姿へと服装は変わったが、ヘッドコーチ(以下HC)として"広島ドラゴンフライズ"を率いて大方の下馬評を覆(くつがえ)し、堂々の決勝進出を果たしたのだ。

ヘッドコーチ就任1年目で、オールジャパン決勝の舞台へと広島を導いた佐古賢一ヘッドコーチ就任1年目で、オールジャパン決勝の舞台へと広島を導いた佐古賢一「広島に、バスケでつながる風景を」というスローガンのもと、今季からNBL参入を果たした広島は、平均25.9歳という若手主体のチーム。日本代表の主力である竹内公輔以外はトップリーグでプレイしたキャリアがない選手がほとんどで、佐古HCが一からチームを作り上げてきた。

 「泥臭く、粘り強く、食らいつく──」

 佐古HCがいつも選手たちに言い続けている言葉である。チーム練習の時は全体の流れを大切にし、試合中に起こりうるミスを想定して細かく指導を行なう。選手それぞれに対するアドバイスは個人練習の時にしているが、「経験のない選手が試合で特別なことをしようと思う時は必ずミスをする。普段、練習でやっているプレイをしっかりとコートで表現させることを心掛けている」と明かす。

 若手選手たちも、その言葉の意味を理解しつつある。準決勝のトヨタ自動車アルバルク東京戦ではチームディフェンスからリズムをつかみ、思い切りの良いシュートを次々にリングへ沈めて2点差(80-78)で勝利を掴んだ。

「いつも選手に伝えていることは、シュートが入らないことを前提にプレイを作っていけということ。シュートが入る、入らないは関係なく、バスケットは展開のスポーツ。打つべき人間がしっかりシュートを打たなくては、なかなかゲームの展開をつかむことができない。僕たちが目指しているのは、試合に出場した選手がみんな8~10点獲れるバスケット。与えられた個々の仕事に責任を持ち、しっかりとシュートを打ちきれるようなチーム作りをしているつもりです。誰かひとりに頼るようなバスケットは、絶対にさせないようにしていますから」

 だが、決勝の日立サンロッカーズ東京戦では若さが出てしまった。前半から選手の硬さが目立ち、インサイドを日立に完全に支配されて15点のリードを許してしまう。

「ファイナルを意識して慎重になりすぎましたね。思うようにオフェンスが機能せず、タフショットが多くなってしまった。勝負どころで日立に走られて、点数を獲られてしまったのが勝負のポイントだったと思います」

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る