【NBA】現役引退→HC就任。デレック・フィッシャーの新たな旅 (2ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by AFLO

 引退を決意する前から、引退後の道はいくつも開けていた。GMなどチームのフロントの仕事、テレビ解説、さらに選手会の会長として2011年のロックアウトを乗り越えた経験から、政治の世界に入っても成功するだろう、と言われていた。

 もっとも、その前にまずフィッシャーは、現役を続けるかどうかを決めなくてはいけなかった。所属していたサンダーからは、引退せずにチームに残ってほしいと言われていたのだ。年齢は40歳に近づいていたが、よく鍛えられた身体は、まだ続けられるコンディションを保っていた。

 それでも、シーズン最後の試合を終えた後、フィッシャーは自分の中でひとつの区切りをつけようとしていた。

「この何年間か、いつかプレイできなくなるときが来るということは、当然考えていた。次のことを考えるときがくるだろうと思っていた。次に何かがあるのはたしかだ。その時が今、来たのかもしれない」

 次へと進む道を決めるのに、そう長くはかからなかった。多くの選択肢の中からフィッシャーが選んだのは、ヘッドコーチ(HC)の道――。ともに戦い、5回の優勝を達成した恩師であり、友人でもあるフィル・ジャクソン(ニューヨーク・ニックス球団社長)のもとで、ニックスのヘッドコーチに就くことを選んだ。

 いくつかの選択肢の中から、「ヘッドコーチ」という仕事を選んだのは、バスケットボールが好きで、ずっとコートの近くに居続けたかったから。人に前向きな影響を与えることができる仕事だから。人々を導き、チームとして成功をともに目指すことができるから。そして、数あるヘッドコーチのポジションの中からニックスを選んだのは、自分にそのやり方を教えてくれた、尊敬するジャクソンとともに努力することができるからだ。

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