【男子バスケ】W杯で「勝利の方程式」を学んだK・アービング (3ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by AFLO

 若いアービングがチーム内でリーダーシップを発揮するにおいて、ヘッドコーチのシャシェフスキーと大学時代からつながっていることも大きかった。アービングは大学1年終了時にアーリーエントリーをしたため、デューク大に在籍したのはわずか1シーズン。しかもシーズン中の故障によって、大学では11試合しか出場していなかった。

 だからといって両者の関係は、決して薄いものではない。シャシェフスキーが「(大学では)彼を長くコーチする機会はなかったが、私たちはいつでも特別な関係だ」と述べると、アービングも「コーチは僕にとってメンター(恩師)。毎日、話をするんだ」とコメント。たしかにワールドカップ期間中、ふたりはヘッドコーチとポイントガードとして、頻繁に会話をしていた。毎日、ふたりでチームを築き上げていこうと話していたという。

「当初、僕ら(アメリカ代表の選手たち)はあまりお互いのことを知らなかった。でも、毎日少しずつ、関係を築き上げてきたんだ」

 そうして試合ごとに築き上げられたアメリカ代表は、毎試合20点差以上をつけて勝ち続けた。そしてワールドカップ決勝戦でも、強豪セルビアを相手に129対92の大差で勝利。目標としてきた大会2連覇を達成した。また、決勝の大舞台でアービングは3ポイントシュート6本を全部決め、26得点・4アシストをマーク。大会を通しての活躍が認められ、見事ワールドカップMVPに選ばれた。

 試合後、アービングは「これまでの僕の人生で、一番達成感があることだった」と、ワールドカップを振り返った。そして、「仲間たちとこの先の人生、ずっと続くような関係を築くことができた。彼らとともに金メダルを取れたことが嬉しい」と、アメリカ代表の一員になれた喜びを素直に述べている。

 ワールドカップが終わり、選手たちは再びNBAの世界に戻る。今夏の補強でレブロン・ジェームズ(前マイアミ・ヒート)とケビン・ラブ(前ミネソタ・ティンバーウルブズ)を加えたキャブスは、いきなり優勝候補となった。そんな所属チームの劇的な変化について、アービングはこう語る。

「どういうシーズンになるのか、みんな勝手に想像しているけれど、実際に試合をするまでは誰にも分からない。ただ、アメリカ代表でやったように、勝つために必要なことは何でもやる。クリーブランドに戻っても、同じ考え方でプレイすることが大事だ」

 カイリー・アービング、22歳――。ワールドカップで勝ち方を学んだ若きポイントガードが、キャブスの新しい未来を作る。

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