突破できるか?今そこにある、バスケットボール新リーグ「NBL」の課題 (6ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

――リーグをP(プロフィットセンター)にするために具体的に変えていこうとお考えになっている施策は。

山谷「まず大きく変わったのは実は試合数なんです。事業収入というものは、スポンサーもチケットもすべて試合に収れんされますから、試合の数を増やさないということは、商品を売ることができない状況に等しいわけです。だから、試合数を今までの42から54に増やした。ホームゲームが22から28に増えたということは、収入機会が拡大しますから、非常に大きいところです」

――高いと言われているサラリーキャップについてはどうですか。

山谷「前回の記事で非常に高いというご指摘がbj所属のチーム代表の方からありましたけれども、結局サラリーキャップを決める論拠というのは高いか低いかではなくて、市場の原理で決めるものだという認識です。

 今トップクラスの選手がもらっている報酬水準というものを、あるひとつの基準として見なければ、選手も当然モチベーションが下がるかもしれませんし、それが全員半額になるとなれば、それは選手が持っていた既得権を、あきらかに侵害するものになります。ですから、今もらっている選手の報酬水準というのが高いか低いかは別にして、それをひとつの事実としてとらえなければいけないと思っています。

 一方、とはいってもないものはないわけです。経済環境の中で、収入に応じてその金額を決めていくという発想も必要です。だから、労働市場と経済市場両面のバランスを見てサラリーキャップというのは決めるべきものだとなった時に、実は今のJBLの場合、選手(日本人と外国人を含む全選手)サラリー総額の1チームあたりの平均値は、今のサラリーキャップ1.5億円よりも低いぐらいということが分かったんです。

 ですから、『1.5』という数字は平均値ですから、もちろん多いチームもありますが、決して今の選手が極端に不利益を被る額ではない。と同時に、あとはモデルケースとして3億円ぐらいの事業規模を見た時に、50%を製造原価、すなわちチームの編成予算として使うということは妥当な金額だと思います。

 もっと言うと、ないから出せないではないと思うんです。現存している『選手の価値』をベースに考えた時に、その価値に対して、見合った収入のあるチームを目指しましょうということであり、バスケットボールというものにはその可能性があるということなんです。千葉ジェッツさんはそこにチャレンジしようと思ったわけです。

 ただし、チャレンジするかしないかは各チームの価値観なので、まだうちは無理ですというところは、違う仕組みのところでやるべきだと思います。もっと言うと、サラリーキャップというのは、私は10年後には3億、5億にしたいんです。サラリーキャップが上がるということは、イコール市場が拡大しているということですから」

「十分な収入のあるチームになって下さい」という発言は冷淡にも思えるが、何のツテも無いところから田臥勇太の獲得に成功し、その魅力を活かして一気に飛躍した山谷の言葉であれば説得力も持つ。


 インタビュー取材後、あらためてスポーツ界を震撼させた体罰問題について山谷の考えについてメールで問うた。発端はバスケットであったからだ。以下、回答である。

「本件に関しては当協会にてコメントする立場にはありませんので、控えさせていただきますが、「暴力行為根絶宣言」についてはスポーツの指導においては当然のことと思います」

 モラルアップの側面からもトップリーグとしての範を示してくれることを期待したい。

続く>

シリーズ 『スポーツ紛争地図』

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