2013.05.10

シカゴ・ブルズの救世主は、公称175センチの「小さな巨人」

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

1年契約で雇われたネイト・ロビンソンが、プレイオフで窮地に追い込まれたブルズを救っている けが人や病人が続出し、戦力大幅ダウンのシカゴ・ブルズに救世主が現れた。

 といっても救世主は、左ひざ前十字靭帯断裂からの復帰が取り沙汰されて久しいブルズのエース、デリック・ローズではない。昨年夏、ローズ欠場中の穴を埋めるために最低サラリー額で1年契約した、28歳のネイト・ロビンソンだ。ロビンソンといえば、かつてスラムダンクコンテストで3度優勝するも、2011-12年シーズンは開幕前日にオクラホマシティ・サンダーを解雇された控えのポイントガード。その後、ゴールデンステート・ウォリアーズと契約するも、シーズン後にFA選手となり、ブルズに拾われた。

 そんな立場のロビンソンが、苦戦を予想されたプレイオフで、ブルズを牽引する活躍を見せている。

 プレイオフ1回戦の対ブルックリン・ネッツ第4戦。第4クォーター残り3分で14点を追いかける状況において、敗戦目前の雰囲気の中、ロビンソンは2分間で連続12得点を奪って2点差まで追い上げた。この試合を制したブルズは、勢いそのままにネッツを4勝3敗で撃破。カンファレンス・セミファイナル進出の原動力となった。さらに対マイアミ・ヒート第1戦でも、ロビンソンはハーフタイム前にくちびるを10針縫う傷を負いながらも、後半だけで24得点を挙げる大活躍。5月9日現在、1勝1敗で優勝候補ヒートと互角の戦いを演じている。

 身長、公称175センチ――。現役プレイヤーの中で一番小さなロビンソンは、小柄な身体をスピードと得点力で補うダイナミックな選手だ。しかし、本能のままに動くプレイは、調子の良いときと悪いときの振り幅が大きく、コーチから信頼を勝ち取れずにNBA8年間で5チームを転々としてきた。はたから見ると、仔細なところまでこだわり、厳しく律する鬼軍曹のブルズ・ヘッドコーチ(HC)、トム・シボドーとは「水と油」のように思える。

「前に一緒にやった経験がなかったら、確かにもう少し、(ロビンソンを扱うのは)難しかったかもしれない」と、シボドーHCは語る。2010年2月から6月までの4ヵ月間、ボストン・セルティックスのアシスタントコーチと選手としてともに戦った経験と、お互いを必要とする状況が、この「水と油コンビ」を結びつけた。