突破できるか?今そこにある、バスケットボール新リーグ「NBL」の課題 (3ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

――ではチームについてはどういった認識でしょうか。

山谷「チームについてもプロアマという区別は混乱を招きます。プロフィットセンターかコストセンターかという区別が適切でしょう」

――山谷さんがよく言われている「利益を生むP(Prorfit)」か「コストとして考えるC(Cost)」かという括りですね。乱暴なくくりかもしれませんけれども、企業スポーツというのはやはりCということですね。

山谷「原理的に、形態的な構造を見ればCですね」

――バスケ界がプロ化に向けて進まないのはつまり、Pに飛びだせなかったCの方たちというところが、足かせになってきているんじゃないかと。

山谷「それも、要するにこれまで『プロ化する』と言いながらできなかったということで、『企業チームが反対した』という言い方をするケースが結構あるんですけれども、厳密に言うと、民主主義的な意思決定をする中で、そうしたいと思う人が少なかったという話なんです。

 別に企業チームが悪いとか、企業チームが反対したからという......、反対をしたのかもしれませんけれども、プロ化をしたくない、できないという考え方、価値観が、残念ながらトップリーグの中では支配をしていたというのが事実だと思うんです。それはいいか悪いかではないんですよね。あくまでも意思決定プロセスのやり方を見れば、そういうふうに物事が決まってしまうというのは致し方ない」

――しかし、JBLの会議がその意思決定に向けてなかなか進まないということは色々なところからうかがっています。Jリーグの場合もそうでしたが、プロ化に向けて大切なのはすべてを完璧にするための熟考ではなくスピード、走りながら考えるということですよね。

山谷「そういうことですね。バスケ界の場合、走りながら考えるということよりは、一個一個確認をして、やっと今に至るという状況だと思うんです。だから、私自身もリンク栃木にいた時には、JBLの会議に出ていると、企業チーム6対プロチーム2(栃木、北海道)なわけでそこの格差は感じていました。

 プロチームとしては例えば『試合数を増やしたほうがいいじゃないですか』という話を会議でしても、企業チームからは『試合数を増やしたら、コストがかかって予算が増えてしまいます』という声が出て、認められないわけです」

--そこがP(プロフィットセンター)かC(コストセンター)かの違いですね。

山谷「はい。ですけれども、リンク栃木は自分達の判断でbjリーグではなくてJBLに入ったわけです。だから企業チームの価値観が支配的なことは重々承知のうえですし、一切文句を言うつもりはありませんでした。一番大事だと思ったのが、『プロ化なんて無理だ、無理だ』『トップチームがプロ化できない』と言われていた中で、自分達で結果を出さないことには、周りもそれを認めてくれないんじゃないかということです。

 だからこそJBLという企業チームばかりの中でプロとして必死に経営や戦績の結果を出そうとやってきました。そこで確信したのは、バスケットボールの市場というのは、ある一定のレベルまでは拡大できるということでした。それ相応の人口なりマーケットがあるところで拠点を構えて、プロチームを作れば、必ず市場は生まれる。すなわち、バスケットボールというものはもともと商品力があるものですと、外に向かって言えるんです」

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