2012.11.09

【NBA】なぜ弱小クリッパーズが強豪チームに変貌できたのか?

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko
  • photo by Getty Images

「現役ナンバー1のポイントガード」との呼び声が高い27歳のクリス・ポール ロサンゼルス・クリッパーズは少し前まで、『ダメチーム』の代名詞のようなチームだった。オーナーはケチで、成績は常に低迷し、プレイオフとは無縁。当然、観客席は閑散としていて、試合も盛り上がらない。ドラフト指名権だけは毎年上位なので、有望な若手選手を獲得するのだが、成長した後も定着する選手がいない。希望が見えるときはあっても、「どうせクリッパーズだから続くわけがない」と言われ、実際にどん底に逆戻りすることの繰り返しだった。

 そんなクリッパーズが強豪に変身した。昨季はウェスタン・カンファレンス5位の成績でプレイオフに出て、4位のメンフィス・グリズリーズを破って2回戦に進出した。1回戦に勝っただけでも、クリッパーズ史上わずか2度目で大ニュースなのだが、今までと違うのはここからだ。2回戦進出に満足することなく、オフには積極的にFAやトレードで補強したのだ。『ケチ』オーナーも、どうやら勝つ楽しさを知ったらしい。

 その結果、若手からベテランまで揃った層の厚いチームになった。同じ街に派手な補強で話題を集めているレイカーズがいるだけに、開幕前にはほとんど話題にならなかったが、ウェストの頂点を狙えるチームとなった。長年クリッパーズ専属のアナウンサーを務めるラルフ・ローラーも、「(クリッパーズを見てきた)34年間で初めて、心から正直に、NBA優勝を狙えるチームだと言える」と嬉しそうだ。

 クリッパーズをここまで急激に変えたのは、クリス・ポールだ。昨年12月、ロックアウトが明けた直後にトレードで加入したポールは、それから1年も経たないうちに、すっかりクリッパーズを自分色に染めた。コート上ではフロアリーダーとしてチームメイトを盛り上げ、重要な局面や接戦の終盤では自ら決める。勝利に向かう貪欲さ、あきらめを受け入れない気持ちによってチーム全体をひとつにまとめ、若い選手たちの意識を変え、自信をつけさせた。

 ポールの影響はコート上だけにとどまらない。今オフの間にクリッパーズが獲得した選手はほとんど、ポールが推薦したり、勧誘した選手たちばかりなのだ。今年7月のFA解禁のころ、ロンドン五輪アメリカ代表のキャンプや本番前のヨーロッパ遠征で忙しかったポールだが、その合間をぬってチームのフロントと頻繁に連絡を取り、チームの補強状況を聞き、チームが獲得を狙う選手に自ら連絡を取り、勧誘した。FAになっていたチャンシー・ビラップスやジャマール・クロフォード(当時ポートランド・トレイルブレイザーズ)、グラント・ヒル(当時フェニックス・サンズ)らに連絡を取り、クリッパーズがいかに本気で補強し、優勝を狙っているのか、その目標にいかに近づいたかを話し、彼らの力が必要であることを説いたのだった。