角田裕毅、9位入賞の大逆転劇「汚名返上」の5ポイント獲得で信頼を取り戻す (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【角田はフルカウンターを当ててスピンを回避】

 路面温度が50度を超える厳しい環境のなかで、アルファタウリのマシンがいいペースを持っていることはわかった。

 しかし、決勝は16番グリッドからのスタートであり、入賞圏まで駒を進めるのが難しいこともわかっていた。どんなに速さがあっても、予選でミスを犯せばレース週末全体を失ってしまうのが、今の超タイトなF1だ。

 だが、この日のアルファタウリには運も味方した。

 フォーメーションラップでルクレールがマシントラブルにより消え、スタート直後の多重事故で4台が消えた。そして好スタートでピエール・ガスリー(アルピーヌ)を抜いたことで、角田は一気に10位までポジションアップを果たすことに成功したのだ。

 赤旗中断を挟み、リスタートでエステバン・オコン(アルピーヌ)を抜いたものの、ガスリーと1周にわたるサイドバイサイドのバトルで抜き返され、不用意に飛び込んで行き場を失ったターン12で隙を突かれ、オコンに再逆転されてしまった。

 スプリントでは、アルピーヌ勢を上回るペースを持っていることはわかっていた。だが、アルピーヌはストレートが極端に速いセットアップを採っており、彼らの先行を許すと面倒だという意識が逆に空回りしてしまった。

 第1スティントはトレイン集団のなかでの走行。タイヤに厳しい中団勢が早い段階でピットインして行くなか、角田は上位勢と同様に25周前後引っ張る戦略を採り、フリーエアで本来の速さを発揮していった。

 その矢先、16周目のターン10で左側のタイヤがわずかにグリーンに落ち、挙動を乱してしまった。

「ターン10でミスをしてポジションをひとつ失ってしまったので、本当にチームに申し訳ない気持ちです。あれは大きなミスでした。あそこでリタイアにならなかったのはラッキーでしたが、ちょっと恐かったです」

 ほとんどランオフエリアがなく、バリアが目前に迫るなか、角田は左にフルカウンターを当ててなんとかスピンを回避し、グリップが戻った瞬間に今度は右にフルロック。わずかでも反応が遅れればそのまま左のバリアに突っ込むところを、驚異的なマシンコントロールでセーブした。

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