「もうダメかも...」から大進化を遂げた37歳、ハミルトン。中野信治は新規則F1マシンへの適応を絶賛 (3ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、五十嵐和博●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Igarashi Kazuhiro

 ここ数戦のハミルトンは、チームメイトのラッセルが到達できないレベルでタイヤを使っています。ラッセルもいずれは学んでくると思いますが、ハミルトンは前半戦の苦しい時間のなかでもやるべきことをしっかりとやっていた。新しいクルマでの戦い方を学び、自分のものにしつつあるんですよね。それがハンガリーで明らかになったと感じました。やっぱりハミルトンはすごい。世界チャンピオンを7回も獲った実力はダテではないとあらためて思わされました。

 24歳のラッセルも本当に才能のあるドライバーです。天性の速さはもちろん、特に予選の一発をまとめる正確無比なドライビング能力は際立っています。予選で一発のタイムを出す能力は、シャルル・ルクレール、フェルスタッペンとともに現役では3本の指に入ると思います。それくらいの速さと才能、優れた反射神経を兼ね備えた若いドライバーを相手にして、さまざま経験を重ねてきたとはいえ、37歳のハミルトンが真っ向勝負をするのは簡単なことではありません。だからハミルトンは戦い方を変えてきたと僕は感じています。

 この年齢になっても進化しようとしているところが、ハミルトンのすごさ。デビューの頃からどんどん変化し、年齢を重ねるごとに走り方はもちろん言動や態度まですべてが変わって、本当に強くなったハミルトンですが、今年の前半戦は「さすがの彼ももうダメかもしれないな」と思わせるレースが何度かありました。

 シーズン序盤は思うような結果を出せず、無線でチームの作戦を批判するようなコメントをしたこともありました。でもハミルトンは徐々に力を発揮し始め、昨年までのような強さに戻り、そして今、さらなる変化を遂げようとしています。ハミルトンがどのように進化し、若いラッセルと戦っていくのか。そこは後半戦の大きな見どころだと僕は思っています。

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【Profile】
中野信治 なかの・のぶはる 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのCARTおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として若手ドライバーの育成を行なっている。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や2021年からスタートしたF1の新番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当している。

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