「もうダメかも...」から大進化を遂げた37歳、ハミルトン。中野信治は新規則F1マシンへの適応を絶賛 (2ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、五十嵐和博●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Igarashi Kazuhiro

ハミルトンはタイヤの使い方を徹底研究

 ただ、昨年のように同じチームのドライバー間で大きな差はつきにくいと思います。昨年までのマシンは限界ギリギリなところを使えば使うほど速く走ることができました。フェルスタッペンやハミルトンはマシンの限界を超えたところに存在するわずかなスペースを使用して走らせていました。でも今年のグラウンド・エフェクト・カーは限界域でコントロールできるスイートスポットが非常に狭いですし、極端にエッジの効いたクルマにすると逆にタイムが出なくなっている印象があります。

 今年のマシンに関しては、各チームがある程度つかんできたと思いますが、新たな18インチタイヤ(※昨年までは13インチ)についてはまだわからない点が多い。レースによってフェラーリがタイヤをうまく使えたり、逆にレッドブルが全然ダメだったり、デグラデーション(性能低下)の傾向がいまいち見えてきません。

 ただ、そのなかでも光る走りを見せているのはハミルトンです。彼は夏休み前の数戦でタイヤをうまく使い、すばらしい走りを披露しました。ハミルトンは前半戦、激しくバウンシングするマシンでうまく力を発揮できず、ラッセルに完全にやっつけられていました。でも、その間にハミルトンが何をしたかといえば、タイヤの使い方の研究です。徹底的にやっていたと思います。

 ターニングポイントになったのは市街地コースを舞台にした第8戦のアゼルバイジャンGPです。このレースまでにクルマの改良が少しずつ進んだこともあり、ハミルトンはようやく本来のドライビングができるようになり、4位に入賞しました。レース後のハミルトンは、バウンシングによる身体の痛みでなかなかクルマを降りることができませんでしたが、アゼルバイジャンで新しいクルマの走らせ方を自分なりにつかんだように見えました。そこからいい走りを続けています。

 同時に、タイヤの使い方もマスターしたと思います。今年のハミルトンはレース前半のペースが絶対的に遅いんです。マシンとタイヤをコントロールしながら走っていますが、中盤から後半かけては、めちゃくちゃ速い。2位表彰台を獲得したハンガリーGPの終盤の速さは驚異的でした。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る