「5秒速くても抜けない」モナコで起きたフェラーリの誤算。一方ペレスは完璧レースで初戴冠 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

タイヤのチョイスを間違った

 追い抜きが極めて難しいモナコだけに、周回遅れのマナーが勝敗を左右してしまう。しかし、これは明らかにレギュレーション違反であるにもかかわらず、スチュワードは審議対象としなかった。それ以外にも「悪質な"インピーディング(走路妨害)"はいくつもあった」とドライバーたちは口を揃えている。

 ルクレールはウエットコンディションで始まったレース前半をリードし、5秒以上のギャップを築き上げて、悲願の地元優勝に向けて完璧なレースを見せていた。ウエットタイヤのまま粘り、路面が乾いてきたところで直接ハードタイヤに交換すれば、首位にとどまることができる。たとえ5秒速くても抜けないモナコだからこその戦略だ。

 しかし16周目にいち早くインターミディエイト(浅溝)へ交換したペレスのペースが予想以上に速く、フェラーリはペレスの鼻先を押さえるために18周目にルクレールをピットインさせた。だが、ペレスの前にとどまることができず3位に後退してしまい、フェラーリの目論見はここで大きく外れてしまった。

 フェラーリのマティア・ビノット代表は、自分たちの判断ミスを認めた。

「我々は明らかに判断ミスを犯した。最初のミスは、インターミディエイトタイヤの速さを過小評価していたことだ。我々は少なくとも1周早くシャルルをピットインさせるか、そうでなければエクストリームウェットタイヤのままステイアウトして(インターミディエイト勢のほうが速くて追い着かれても)トラックポジションを守り、直接ドライタイヤに交換するべきだった」

 これでフェラーリは、いずれ迎えることになるハードタイヤへの交換時には何としてもレッドブルよりも先にルクレールをピットインさせ、"アンダーカット"をしなければならなくなった。

 それが21周目の混乱につながった。

 路面は急速に乾いていき、アンダーカットを狙うフェラーリは慌ててピットインの指示を出す。ペレスより先にピットインしなければ、ルクレールはアンダーカットで逆転できない。同時にウエットタイヤのまま首位にとどまるサインツも、ペレスより先にピットインしなければアンダーカットされてしまう。

 その結果、2台が同じ21周目にピットインすることとなり、サインツの後方で待ち時間が生じたルクレールはタイムロスを喫し、翌周ピットインしたフェルスタッペンにまで逆転を許すことになってしまった。そしてサインツも前述の周回遅れによってタイムロスを喫し、翌周ピットインしたペレスに逆転されてしまった。

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