F1昇格。角田裕毅が日本人ドライバー歴代最高の逸材である理由 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 限界というのは、超えてみなければ、どこにあるのかわからない。F2マシンと比べてもF1は異次元の速さと複雑さを秘めているだけに、なおさらだ。

 2度のテストドライブを経て、おおよそのイメージは掴み始めている。とはいえ、肉体にかかる負担も異次元なら、コーナーごとにデフやブレーキバランス、パワーユニットのセッティングを変更してマシン挙動を最大限にコントロールするという次元のドライビングも、まだできていない。

 まだまだ理想とする走りにはほど遠いことは、彼自身が一番よくわかっている。

「一番はフィジカルですね。あとはガスリー選手と一緒に走ったわけではないので具体的なドライビングの差はまだわからないんですけど、ステアリングのどこをどう操作すると何がどう変わるのかということと、ボタン操作によるモード変更でパフォーマンスに直結させるところまではまだいけていないので、その理解をメインに学んでいけたらと思っています」

 12月のアブダビでのテストでも、5番手というまずまずのタイムを刻むことはできたものの、アタックラップ中のボタン操作ミスもあった。

「セクター3でブレーキバランスを前寄りに変更するんですけど、そのボタンの隣にあるリチャージボタンを押してしまうことが何度かあって、ポテンシャル的にあと0.3〜0.4秒くらいは縮められそうな感じがしました。ただ、こういうミスがあったことで、来年のステアリングはボタンの配置を換えてほしいとリクエストできましたし、いい経験になったと思います」

 コース上でのバトルの巧さは、すでにF2の荒波のなかで十分すぎるほどに披露してきた。

 瞬間的なライン取りやマシンコントロールという直感面も、バトルに持っていくまでいくつも前のコーナーから相手との間合いを組み立てていく頭脳面も、どちらも今のドライバーのなかでトップクラスにある。とくに前者は磨いてもそう簡単に身につけられるようなものではなく、これまでの日本人のなかでもこれを持っていたドライバーはそう多くはなかった。

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