マルケスの「技」を盗めたか。中上貴晶がMotoGP参戦3年目を振り返る (7ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

ーーいろんな道具や装置が出てくるものですね。

「そんなにいらないんですけどね(笑)。あったらあったでやることも増えるし、自分たちは感覚を研ぎ澄ませて走っているので、そこがぼやけちゃうと逆に難しくなる面もあるので......」

ーーというと?

「自分がコントロールしたい部分を、例えば電子制御でコントロールされると、乗っている感覚がぼやけてくるじゃないですか。今シーズン、僕が速くなった要因にはたぶんもうひとつあって、実はシーズン後半になるとトラクションコントロールを減らしているんです。トラクションコントロールが効いている状態だと、たとえばコーナー最後の立ち上がりで自分が50〜60パーセントくらいでスロットルを開いている感覚でいても、実際は制御が入って80パーセントくらい開いていて、自分では最後にガバッと40パーセント開けたつもりでも実は20パーセントしか開いていない、ということになる。

 だから、電子制御はすごく助けてくれる装置なんですが、強すぎると自分が加速したいときにしない、というふうにむしろ、ぼやけさせてしまうんです。タイヤが減ってグリップが落ちてくると余計に顕著に出てくるので、そこは今年の大きな変化だったと思います」

ーー最後に、21年シーズンの目標を聞かせてください。

「今年の実績でいえば、すごく調子が悪いときでもシングルポジション圏内、調子がよければ表彰台に近いところでレースをできました。来シーズンは的をもっとしぼって、悪くても5〜6位、ベースは表彰台争い、を自分の中で目標にしています。1年目から少しずつ成績が良くなってきて来年は4年目なので、早く表彰台と初優勝を達成したい。今は、いい意味でのプレッシャーを感じています」

【profile】 
中上 貴晶 なかがみ・たかあき 
1992年、千葉県生まれ。4歳でポケバイに乗り始め、12歳からロードレースに参戦。2006年には全日本ロードレース選手権GP125クラスを全戦全勝でチャンピオン獲得。08年に世界選手権125ccクラスにフル参戦し、Moto2クラスなどを経て18年から最高峰クラスで戦っている。

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