レッドブル・ホンダの鬼門モンツァで「予選モード禁止」は吉と出るか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 そして今週末に向けては、ポジティブな要素もある。パワーユニットの「予選モード禁止」だ。

 ただ、予選モード禁止という言葉がひとり歩きしているが、正確には「予選と決勝を同一エンジンモードで走る」ということだ。

 予選Q3になるといつもメルセデスAMGに大きく差をつけられていた"パーティモード"と言われるスペシャルモードが使えなくなる。その点では差が縮まることは間違いない。しかし、予選でのみ使用していたアグレッシブなモードが使えなくなるのは、ホンダも同じだ。

 その予選での「攻め」がなくなる分だけパワーユニットにかかるダメージは少なくなるため、それを決勝でまんべんなく使うことになる。ということは、瞬間的なメルセデスAMGとの差はより長い距離に分散するため、小さくなると言えるのかもしれない。だが、それほどシンプルな話でもなさそうだ。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう説明する。

「予選モードがなくなって楽になりますが、レース中もずっと同じモードで走らなければならないので、もう追いつけないからモードを落としてセーブしよう、ということもできなくなります。予選から決勝の最後まで、まったく同じ負荷をかけた状態でエンジンを使わなければならない。

 予選モードがなくなった分をそういうところに振り分けた時、この先のシーズンの各サーキットでどれだけの負荷があるのか、全開率や温度など負荷が高いところでどれだけ使うか、パワーセンシティビティの高いところでどれだけ使うか、それらを総合的に見て決めなければならないということです」

 つまり、その週末の予選・決勝への合わせ方によっては、パワー面でまったく歯が立たないことも考えられるし、一度走り始めてしまうとその差は埋まらない。瞬間的にモードを変えてアタックを仕掛けることもできず、最初から最後まで同じパワー差で走ることになってしまう。

 レース中にできるのは、ERS(エネルギー回生システム)の電気の使い方変更だけ。むしろ決勝は変化に乏しく、退屈なものになる可能性もあるだろう。

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