コロナ禍でF1も危機。4チームが来季を待たずに消滅する可能性も (3ページ目)

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ウィリアムズに次いで大きなリスクを背負っているのがハースだ。こちらは、新型コロナウイルスの影響以前に、チームオーナーのアメリカ人、ジーン・ハースの「やる気」の問題と言えるかもしれない。

 ハースは冬のテスト中、そしてNetflixのドキュメンタリーシリーズ「Drive to Survive」の中で、これまで自分の資金をチームに投入しても平均的な結果しか得られないことに失望していることを明らかにした。そして、2020年末まではチームへの資金提供を続けるが、その後はチームがレースに勝つチャンスがない限り、撤退するかもしれないとも明かしている。だが、現実的に考えて、今季(仮に今季があれば、だが)ハースのチームが高い競争力を発揮する可能性は低く、そうなれば厳しい決断を下さなければならないかもしれない。

 一方、一時はウィリアムズ以上に、その将来が危ぶまれていたレーシングポイントは、2021年から「アストンマーティン・レーシング」に生まれ変わることで、当面、F1に留まる道を確保した。ただし、これが他の自動車メーカー系ワークスチームの成り立ちと異なるのは、アストンマーティン自体も財政危機に陥っているという点だ。実はアストンマーティンとレーシングポイントの双方が、ドライバーのランス・ストロールの父であるカナダの億万長者、ローレンス・ストロールからの出資を受けることで実現した動きなのである。

大富豪を父に持つランス・ストロール大富豪を父に持つランス・ストロール F1では、裕福な家族を持つドライバーがチームに資金を持ち込んでシートを得るケースは少なくない。近年ではストロールがその典型例だが、今回は彼の父親がチームだけでなく、自動車メーカーにまで出資して息子のチームを「ワークスチーム」に生まれ変わらせてしまうのだから驚きだ。ただし、それは裏を返せば「特定のドライバー依存」の経営とも言えるわけで、中期的な参戦の見通しは開けたものの、これでチームの長期的な将来が保証されたとは言い難い......。

 将来に不安を抱える4つ目のチームはアルファ・タウリ(元トロロッソ)だ。今季からチーム名を変更し、レッドブルのアパレルブランド、アルファ・タウリに生まれ変わったとはいえ、レッドブルの「第2チーム」としての位置づけは従来どおり。問題は親会社のレッドブルだ。新型コロナウイルスの流行により、外出禁止やロックダウンが行なわれた結果、世界各国でクラブ、バーが閉鎖され、レッドブルの本業であるエナジードリンクの売り上げが激減しているのである。

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