2019.09.09

佐藤琢磨がインディ年間王者を
狙うには何が足りないのか?

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 ポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデンと、ランキング2番手のシモン・パジェノー(いずれもチーム・ペンスキー)も琢磨同様にQ1クリアができず、予選結果は13位と18位。多重クラッシュの発端を作ったビーチとレイホールの予選順位がそれぞれ11位と15位だったから、彼らの近くでスタートを切っていた。ニューガーデンたちがアクシデントの被害者となっても何の不思議もなかった。それでも、最終的にニューガーデンはトップ5でゴールし、パジェノーも7位という好結果を残した。

 今回琢磨がアクシデントに遭ったのは、確かに不運な面もあった。しかし、現実として彼がスタート直後に上位フィニッシュのチャンスを失い、ランキングトップ5入りという目標から遠ざかったのに対して、ニューガーデンとパジェノーはターン1入口の密集の中で接触されながら、マシンに大きな被害は受けなかった。それは彼らが単に”幸運だったから”ではなかった。

 2人はブレーキング前にポジションを幾つか下げており、スタート直後のターン1に対しては非常に慎重になっていた。さらに、彼らはいつでもアウト側のエスケープゾーンへと逃げられる準備もしていた。そこを通り抜けてもペナルティは課せられないことがわかっているからだ。混乱を回避したニューガーデンは18番手まで下がり、追突されてスピンしたパジェノーは、実質最後尾である19番手で1周目を終えた。しかし、「1周目のターン1でレースを終えることは絶対避ける」という目標を掲げていた彼らは、それぞれ30点と26点という高得点をあげた。

 タイトルコンテンダーは慎重に走るが、それ以外のドライバーたちは多少のリスクを取って戦うのが正解、という考え方もある。スタートは複数のポジションゲインを果たす絶好のチャンスだ。しかし、ポートランドで1周目にしてアクシデントの犠牲となったドライバーたちの陣営は、もっと慎重でよかった。

 琢磨の場合、予選結果には表われなかったが、レース用セッティングには自信があった。彼らはレースに臨むにあたり、「昨年のように、105周という長いレースの中で順位をひとつずつ確実に上げていく戦い方をしよう」という共通認識を、チーム全体でもっと強く明確に持つべきだった。