「レプソル・ホンダから離脱?」ロレンソとドゥカティの危険な火遊び (2ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 これはプラマックが自ら判断したことなどではなく、企業上層部あたりでおそらく誰かが進めていることだ、と述べたのだ。「ドゥカティの〈ほぼ〉全員が、僕の残留を希望してくれている」とミラーは明かした。「でも、なんだか古き良き思い出に浸っている人たちもいるみたいなんだ」。

 このコメントからわかるのは、2016年初頭にロレンソが覇気に満ちていた頃と同様の体制で受け入れる準備がドゥカティ側にはできている、とロレンソに思わせたのだろう、ということだ。そしてその当該人物は、ロレンソが1年後にその企業から去ってしまったのと同じくらいにあり得ない今回の移籍劇を企てるほどの、影響力を持った人物でもあるのだろう。

 ジジ・ダッリーニャ(ドゥカティ・ゼネラルディレクター)は、決勝が行なわれた日曜にイタリアの『スカイスポーツ』の質問に対して、こんな返答をしている。「私としては、最高のライダーたちに我々のバイクに乗ってもらえるよう、最善を尽くす。チャンスがあるのなら、少なくともそれを実現させる努力はしたい」

 これは当事者双方にとって、火遊びのような危険きわまりないゲームだ。

 ダッリーニャにとっては、ロレンソが離脱して以来うまく調和の取れているファクトリーチームとサテライトチームのバランスを、引っかき回してしまうことにもなりかねない。なかでも、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)とダッリーニャの関係はすでに微妙であるともささやかれているが、少なくともその際どい現状を修復することにはならないだろう。

 日曜の決勝で劇的な名勝負を制したドヴィツィオーゾはレース後に、「この水面下の動きの原因は、ドゥカティが現在のラインナップに満足していないからなのだろうか」と訊ねられた。ドヴィツィオーゾからの返答は、「それはジジに聞いて」という、実に素っ気ないものだった。

 それにしてもダッリーニャは、今のラインアップを差し替えて古なじみの選手を入れたとしても、果たしてタイトルを取りに行ける可能性がどれほどあると考えているのだろうか。

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