レッドブル・ホンダのレース屋魂。パワー「前借り」で勝ちに賭けた (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 まさにホンダらしい、アグレッシブなレース屋魂だった。

 タイヤの10周分の差と、パフォーマンスを増したパワーユニット。フェルスタッペンは1周で0.8秒速い圧倒的なペースでルクレールを追い詰め、残り2周で抜いた。

 ただ、接触しながらのオーバーテイクはスチュワード(審査員)の審議対象となり、裁定が下るまでに、実に1時間45分を要した。

 結果的に、エイペックス(※)を抜けた先のアクションは、いずれか一方のみに責任があったわけではないと判断。接触はレーシングアクシデントということで、フェルスタッペンの優勝が確定した。

※エイペックス=コーナーを曲がる時、クルマがもっともインに寄るコーナー内側の頂点のこと。

 しかし、そのペナルティがあろうとなかろうと、コース上において最速で、いずれルクレールを抜いて最初にチェッカードフラッグを受けていたのは、フェルスタッペンであり、レッドブル・ホンダだった。そのくらい、レース終盤のフェルスタッペンは神がかった速さを見せた。

 それは、タイヤを保たせ速く走らせるドライバーの腕と、高速コーナーを速く走るダウンフォースを手に入れたマシンと、アグレッシブにパワーを引き出したパワーユニットと、その性能を最大限に結果につなげたレース戦略......それらすべてを合わせた、レッドブル・ホンダという"パッケージ"の速さであり、強さだった。

「今日のレース展開を見れば、ペナルティが出ようと出まいと、最初にゴールを切ったという事実は変わりませんし、あそこまでの戦いができたのは間違いないことです」(田辺テクニカルディレクター)

 もちろんそれは、レッドブル・リンクというサーキットでのことであり、気温34度・路面温度56度という特殊なコンディションでのことでもある。今後どのレースでも、常にこのようなパフォーマンスを発揮できるよう、さらに"パッケージ"を進歩させていく必要がある。

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