2018.06.20

お客さんではなかったアロンソ、
深夜の激走でトヨタがル・マン初制覇

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken photo by TOYOTA Gazoo Racing

「ともかく『ホッとした』という言葉しか思いつかない……」(中嶋一貴)「最後の1ラップが終わり、チェッカーフラッグが振られるまで信じられなかった(セバスチャン・ブエミ)。「去年のインディ500で、つかみかけたと思った勝利を失ったから、また同じことが起きるんじゃないかと心配だった……」(フェルナンド・アロンソ)

 レース後、表彰台の頂点にたったトヨタTS050 HYBRIDの8号車に乗る3人のドライバーたちが、そろって口にしたのは「安堵」の言葉。

優勝を決めて喜ぶアロンソ、中嶋、ブエミの3人 だが、悲願の「ル・マン制覇」を成し遂げ、小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス組の7号車と共に1位、2位を独占した今年のトヨタの戦いぶりを、ひと言で表すならば「完璧」と言うよりほかにない。通算19回目のル・マン挑戦で、彼らが見せたのは、文字どおり「圧倒的な強さ」だった。

 日本のメーカーによるル・マン制覇は1991年のマツダ以来、2回目。トヨタにとっては1985年のル・マン初参戦以来、ようやく掴んだ勝利だ。特に2012年以来、取り組んできたハイブリッド車によるル・マン制覇は、ル・マンにハイブリッドを持ち込んだパイオニアであるトヨタにとって、大きな到達点といえるだろう。

 2台のトヨタは、レース序盤から3位以下をグングンと引き離す。しかも、7号車と8号車が何度も順位を入れ替えながら、激しいトップ争いを繰り広げた。なかでも圧巻だったのは、今回のル・マンで注目の的となった、フェルナンド・アロンソが深夜に見せた「快走」だ。

 前のスティントを走った8号車のチームメイト、セバスチャン・ブエミがスローゾーンでのスピード超過によってぺナルティを受け、トップ7号車との差は、一時は大きく開いていた。それをアロンソが深夜のドライブで一気に縮めて、続く中嶋に交代。そして、8号車を引き継いだ中嶋が明け方に見せた7号車との激闘で、見事に可夢偉を捉えてトップへと躍り出たことで両者の勝負はほぼ決した。

「決勝では、スタートして第1スティントの3周目くらいに、デフのセンサーのトラブルが出てしまって、レース中にセッティングをいじれなくなってしまった。それをごまかしながら走っていたけど、限界があった。

 途中、8号車とは無駄に戦っても仕方ないと思っていました。24時間、まずはトヨタとして勝つことが目標だった。1台に何かあっても1台が走りきることを任務としていたので、リスクを負わず、やれる仕事をやりました」と2位に終わった可夢偉。