バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。熱い走りに復帰待望論も (6ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 前を抑えられて思うように走ることができないフラストレーションが、バトンを突き動かした。

 レース中盤の39周目、最後までタイヤを持たせて走り切る戦略を変更し、もう一度ピットインをしてウルトラソフトタイヤに履き替え、20秒のタイムロスを挽回したうえでアタックする。

「ジェンソン、最後まで最大限のペースで走り切れ。どこまでやれるか見てみよう」

 レースエンジニアのマーク・テンプルがそう言って送り出した。バトンは9位を走るトロロッソの後ろに周回遅れとして戻ったが、ペースはバトンのほうが速く、トロロッソを追い回す格好になった。やはり純粋なペースでは、マクラーレンはトロロッソを上回っていたのだ。8位のロマン・グロージャン(ハース)との差も縮まりつつあった。

「8位とか9位争いをしてて、すごく楽しいよ!」

 バトンは冗談めかして言ったが、ドライビングは攻め続けている。

 55周目を過ぎるころには、20秒以上あったウェーレインとの差がかなり縮まってきた。そして58周目、ポルティエでウェーレインのインが空いたのを見たバトンが飛び込み、両者は接触。ザウバーのマシンは浮き上がり、横倒しの状態でウォールに当たって止まった。幸いにしてふたりにケガはなかったが、バトンの左フロントも大破して彼のレースはここで終わってしまった。

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